2011年3月23日(水)
セマンテックWebで広がる検索とSEOの近未来 Vol.1
HTML5という新たな規格の誕生により加速するセマンティックWeb
記事INDEX
- 1.はじめに
- 2.セマンティックWebについて
- 3.セマンティック要素とSEOの関係性
- 4.最後に
本レポートの読者の皆さまの中には、セマンティックWebというキーワードを聞いたことがある方がいるのではないでしょうか。
このセマンティックWebという概念は、今に始まったことではなく既に10年以上前から存在している構想で、簡単に言うなれば「機械がキーワードの意味を理解し、より高度な情報整理を可能とする」という構想です。
ではそもそも10年以上前からある概念を、なぜ今取り上げるのか?ということですが、実はセマンティックWebについては、規格がなかなか定まらず、様々な仕様が存在した為、今現在まで本格的な普及には至らなかったという背景があります。
しかしながら、近年HTML5という新たなHTMLの規格が誕生し、同規格にセマンティック要素が取り入れられたことから、今後近い将来この波が加速すると考えられます。
そうした背景から、今回は、セマンティックWebをテーマに、検索エンジンとSEOの近未来について書きたいと思います。
まずセマンティックWebについてご説明する必要があると思います。
このセマンティックWEBとは一体何でしょうか?
これは今から遡ること1998年にワールド・ワイド・ウェブ(www)の創始者でありW3Cの中の人でもあるTim-Berners Lee(ティム・バーナーズ・リー)によって提唱された概念です。
このセマンティックWebという概念は、機械がWeb(コンテンツ)情報の意味を扱い、かつ高度に処理することができることを目指し、インターネット上に日々膨大に膨れ上がる情報をさらに適切に整理することで、より優れた情報検索を提供するというものです。
例えば、子を持つ親の立場である方はこんな経験をしたことはないでしょうか。
「子どもが夜間に急な熱を出してしまった!今やっている病院はないだろうか?」
こんな事態に直面した場合、検索エンジンを用いて「渋谷 小児科 夜間」というような具合で検索するかもしれません。
現在の検索エンジンの場合、こんな具合で検索結果を返します。(※図1)
図1をご覧頂ければ分かる通り、現在の検索エンジンは、サイト内にある文字列から判断し適切な検索結果を返そうとする為、決してユーザの欲しい情報に直ぐに辿りつける訳ではないといえます。
つまり”今(夜間)やっている小児科を探したい”というニーズを満たすには、現状検索結果から数アクション必要となります。
ところがセマンティックWebの概念が世の中に浸透し、普及した瞬間、検索の世界は様変わりします。(※図2)
つまり検索エンジンは、文字列から検索結果を引っ張るのでなく、意味を理解する為、この場合、検索エンジンが夜間の時間軸を理解することで、対応してくれる小児科の病院を検索結果として優先的に返してくれるようになります。
これだけを考えてもセマンティックWEBは近未来のインターネットの世界においてとても素晴らしい恩恵をもたらしてくれるとは言えないでしょうか。
次に本レポートをご覧頂いている読者の皆さまなら、気になるところ「SEO」と「セマンティックWEB」の関係性ではないだろうか?
なぜなら、今後この概念がWebに浸透するには、検索エンジン側の対応だけでなく、Webサイト側もセマンティック要素を取り込み、対応をする必要があるからです。
このセマンティックWebに対応する為には、サイトを構成するHTMLに意味を持たせる為、メタ情報(セマンティック要素)を付与する必要があります。
もし仮にインターネットの世界で、今後加速度的にセマンティックWebが普及し、検索エンジン側が対応を進めた場合、対応していないWebサイトは、もはや過去の遺産であり、検索結果に反映される機会が減少=ユーザとのコンタクトポイントを失う可能性すらあります。
この点については、Googleのユーザエクスペリエンス担当副社長のマリッサ・メイヤーが、とある取材の中でこのように述べています。
「Googleはキーワードによる検索を得意としているものの、この手法に限界があることを理解しており、セマンティック要素は今後検索エンジンのアルゴリズムに組み込むべき要素となると考えている。」
つまりこの事実は、Webサイトにセマンティック要素を取り入れることが、今後のSEOにおいて、きっても切り離せない関係になり得るということを暗示していると言えます。
例えば、先ほど例に挙げた夜間診療の例を当てはめて考えると図3のようになります。
では、現段階でセマンティック要素をサイトに取り入れる手段としてどのようなものが存在するのか?ということについて、知りたいと思われるのではないでしょうか。現段階では、前述のHTML5というHTMLの新規格に取り込まれたMicrodata(マイクロデータ)によって実現することが可能です。(その他Microformats などもありますが、今回は省略します。)
このHTML5は、現在も様々な企業や団体によって、無数の提案が繰り広げられている為、仕様が完全に固まっている訳ではないが、最近ではHTML5によって構築されているサイトを見かける機会も増えているので、新規サイト構築の際は、同規格によるサイト構築を視野に入れる方が理想と考えられます。
これまで、セマンティックWebの歴史、ならびに次世代規格となるHTML5でセマンティック要素が取り入れられ、HTMLを構成する要素が意味を持つようになること、さらにSEOと同要素が切り離せない関係にあることを述べてきました。
しかし、セマンティック要素を今直ぐサイトに取り込む必要があるという訳ではないことも付け加えておきます。
なぜなら検索エンジン側の対応が完全に進んでいる訳ではなく、同規格は現在も仕様について議論されているからです。
次回のSEO業界レポートでは、こうした状況も踏まえ、セマンティックWebに関連した検索エンジンの動向についてお伝えしたいと思います。
NEXT >セマンティックWebで広がる検索とSEOの近未来-Vol.2-
2011.2.20
*本文中に記載されている会社名および商品名・サービス名は、各社の商標 または登録商標です。
GMO TECH株式会社
2006年12月に現・GMO TECH株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2009年にGMOインターネットグループにジョインし、グループのSEO事業を牽引。2015年3月からはGMOインターネット株式会社 取締役 グループ広告部門統括としてグループ全体の広告関連事業を統括している。