GMOインターネットグループの技術情報は新しいサイトに移管しています。 新しいサイトはこちら

社内レポート

2013年1月9日(水)

グローバル向け事業を手掛けながら世界中を見てきた経験が、スマートフォン向けアプリの海外展開を成功に導く

海外展開を成功に導くコツ

スマートフォン市場で勝ち残るためのアプリ/サービス開発のポイントを紹介するGMO最新ネット業界レポート「スマートフォン編」。今回からはGMOゲームセンター(株)の海外事業本部で副本部長及び、GMO GameCenter USA Inc.の取締役副社長を務める高橋幸太郎氏が、海外展開を成功に導くコツをお届けする。GMOゲームセンター(株)が運営しているAndroid向けゲームアプリプラットフォーム「Gゲー」は、現在世界146ヶ国に向けてゲーム提供を行うなど、積極的な海外展開を進めている。2012年10月から11月にかけては、オリジナルタイトルがGoogle Playゲーム無料総合ランキングにおいて3ヶ国で1位を獲得するなど、すでに海外市場での成功の手応えを見せている。その立役者が高橋氏だ。

初回は、「Gゲー」以前にもソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(株)(現ソニーモバイルコミュニケーションズ(株))(以下ソニー・エリクソン)や華為技術有限公司(ファーウエイ・テクノロジーズ /Huawei Technologies Co. Ltd )(以下ファーウェイ)においてヒット商品を手掛けてきたという同氏に経歴について紹介。

記事INDEX

「売れる商品を作る」ことを心に誓う

私がモバイル関連の仕事をするようになったのは2004年にソニー・エリクソンに入社したときからで、その前はゲームクリエイターとしてコンシューマ向けゲームの企画・開発やネットワーク関連ビジネスの立ち上げなどをやっていました。その頃に学んだゲーム作りのためのノウハウは、今の仕事にも活かされている部分があると思います。

例えば、欲張ってたくさんの機能を詰め込みすぎてはいけないということなどは、今でも常に心掛けています。開発の予算や期限は限られていますし、何よりもあまり詰め込みすぎるとシステムが複雑になってユーザーの敷居を高くしてしまうので、ある程度の割り切りが重要になるわけです。また、プロジェクト管理の重要性もこの頃に学びました。当時はまだ若かったので何でも自分でやろうという気概が強かったのですが、規模が大きい開発になるとそれだけではうまくいきません。マネジメントをしっかりと行って、計画的に開発やプロデュースを行う必要があります。これらの点は、スマートフォン向けのゲームでも事情はまったく変わらないと思います。

転職のきっかけはその直前に企画したプロジェクトでした。入社当初から挑戦したかった企画で、自分なりに入念に準備をして臨んだのですが、あまりいい結果を出すことができませんでした。そのときに、商売である以上は売れなければ意味がないことを強く実感し、「絶対に売れるものを作ってやる」という気持ちで新しい環境での再チャレンジを決意したんです。

こだわりの精神が生み出した大ヒット端末

退職後はソニー(株)に勤め、ネットワーク関連ビジネスの立ち上げなどを行いました。ただ、当時は海外に出て仕事をしたいという気持ちが強く、そのチャンスが多いという理由でソニー・エリクソンに異動しました。モバイル事業に関わるようになったのはそのときからです。

2005年から2008年まではアメリカ勤務となり、携帯電話端末の企画やプロデュースを担当しました。その当時に私が企画して、ソニー・エリクソン史上で一番のヒットを記録したのが「ウォークマン携帯」の中心端末の1つでした。携帯電話にウォークマンの技術を載せた端末で、海外マーケットで爆発的なヒットを記録しました。「売れるものを作る」という決意が形になった瞬間でした。

自分自身アメリカで仕事をしてみて感じたのは、現地の技術者は技術力は高くてもプロデュースが苦手な傾向があるということです。それに対して日本人は、製品開発に対するこだわりが強く、細かな要素を綿密に積み上げていくことに長けていると思います。私はそのこだわりの精神を大切にして、日々の研究やマネジメントをきっちりこなすことで勝負しました。その結果、ヒット商品を生み出すことができて、こだわり精神の強い日本人が本気で取り組んで勝てない理由はないと実感しました。

ちなみにこの頃、勤務地こそアメリカでしたが、仕事の関係で世界中に足を運んでいます。この4年弱の間に世界各地で見聞きしたものが、海外でビジネスをする上での私の判断基準に大きな影響を与えていると思います。

日本のために働きたいという気持ちから、アクロディアへ

2008年に日本に戻り、中国の大手通信会社であるファーウェイに入社しました。そこではソフトバンクモバイル向け事業の責任者を勤めたのですが、当時のファーウェイが持っている技術で、携帯電話キャリアに向けて売り出せる製品ということで企画、提案したのがデジタルフォトフレームです。PCや携帯電話から直接写真を送って表示できるというもので、キャリアさんの大きな協力もあってこれもヒット商品になりました。

ところが、1年以上務めるうちに、自分がファーウェイという会社にいることに対して違和感を覚えるようになっていきました。勤め先は日本でしたが、中国の会社なので当然中国人のスタッフが大勢働いています。彼らの熱意というのは凄まじく、大学を卒業したばかりのエリートが強烈な責任やプレッシャーに晒されながらも必死で努力して結果を出していきます。中国の発展のために本当に必死で働いていると感じました。

その姿を見ながら、彼らに負けたくないという思いと同時に、やはり自分は日本のために働きたいという気持ちを持つようになったんです。結局、その気持ちが強くなってファーウェイを退職し、日本のベンチャー企業である(株)アクロディアに入社しました。

日本ももっと海外の表舞台に出ていくべき

私は日本の技術とクリエイティブは世界でもトップクラスだと信じています。ですから、もっと日本発の製品やサービスを海外に出していくべきだと思います。その想いから、(株)アクロディアでも海外事業を担当していました。その後、GMOゲームセンター(株)が立ち上がり、「Gゲー」が海外展開を本格化する2011年の夏頃から、私も「Gゲー」の海外事業を担当するようになりました。

「Gゲー」の海外展開はその年の4月から始まっていましたが、まだいろいろな部分が手探りの状態でした。その当時、私にはスマートフォン向けのアプリマーケットはGoogleのAndroid Market(現Google Play)とAppleのApp Storeに大きく集約されるだろうという予感がありました。

そこで、当初展開していた北米、韓国、欧州の特定のマーケット向けの展開に加えてAndroid Marketでの事業展開をスタートさせました。2012年11月現在、「Gゲー」は世界146ヶ国で展開しています。そこで次回は、この発展を支えている、海外事業を展開する上での指針などを紹介したいと思います。


取材日:2012.11.26



*本文中に記載されている会社名および商品名・サービス名は、各社の商標 または登録商標です。