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社内レポート

2013年4月17日(水)

マネタイズのために必要な要素は何かを見極める

クオリティは必要条件、しかし十分条件ではない

スマートフォン市場で勝ち残るためのアプリ/サービス開発のポイントを紹介するGMO最新ネット業界レポート「スマートフォン編」。引き続き海外市場への展開にフォーカスを当て、GMOゲームセンター株式会社 海外事業本部で副本部長を務める高橋幸太郎が解説する。

「Gゲーby GMO(以下Gゲー)」(国際展開ブランドは「G-Gee(ジージー)」)では、現在世界146ヶ国に向けてゲーム提供を行うなど、積極的な海外展開を進めている。2012年にはオリジナルタイトルがGoogle Playゲーム無料総合ランキングにおいて3ヶ国で1位を獲得するなど大きな成果を得たが、2013年はさらなる成功を勝ち取ることを目標としている。そこで今回は、「Gゲー」が海外向けタイトルをリリースする上で意識しているポイントや、本格的なマネタイズに向けてチャレンジしていることなどを紹介する。

記事INDEX

ユーザーが納得するクオリティを追求

「Gゲー」にとって2013年は、より本格的に海外展開を進めていく年に位置づけています。すでに無料ゲームでは2012年にある程度の実績を残すことができたので、次に目指すのはビジネスとしての成功、すなわちしっかりと課金のモデルを確立してマネタイズにつなげていくということです。

2013年に入って、「G-Gee」のブランドで2本の新しい海外向けタイトルをリリースしました。最初にリリースしたのが「Giant Realms 3D」で、ジャンルとしてはいわゆる"箱庭系"のソーシャルゲームです。2本目に出したのは「Legend of Minerva」で、こちらは日本でリリースしているカードバトルゲーム「幻想のミネルバナイツ」を海外向けに再デザインしたものになります。

この2タイトルに共通しているのは、ゲーム内容やグラフィックなどのクオリティにかなりこだわって作ったということです。北米を中心とした海外のゲームユーザーは、日本のユーザー以上にクオリティに対してシビアな傾向があります。グラフィックが貧相だったりゲームとしての完成度が低かったりすれば、遊んですらもらえない可能性があります。ですから、その点は強く意識して作りました。

例えば「Legend of Minerva」ですが、国内版はブラウザベースのWebアプリ型ゲームとして作られているのに対して、海外版は一部をネイティブアプリとして開発しています。ネイティブの機能をフル活用してグラフィックの表現力などを高めるためです。具体的には、画面の周囲に飾り枠をつけたり、ボタンのデザインを凝ったものにするなどといった修正を行っています。音楽やムービーの精度も上げており、戦闘時のムービーを複数パターン用意してRPG風の演出効果を高めるなどといった工夫もしています。

「Giant Realms 3D」の場合は最初から海外向けにデザインして作ったゲームですが、こちらもグラフィックにはかなり力を入れており、3Dで本格的な映像を楽しむことができます。ゲームとしての完成度も高いということで、レビューでも高い評価を得ています。

海外のユーザーは、日本人とはグラフィックや音楽の好みが大きく異なるので、たとえ日本向けの既存のタイトルだとしても、海外でリリースする上で再デザインは必須になると思います。見る目の厳しい海外ユーザーでも納得できるクオリティを追求することは最低限必要な条件だと考えて作ったのがこの2タイトルです。

マネタイズのためにはクオリティだけでは不十分

当初の狙い通り、この2タイトルはクオリティに関しては納得のいく評価を得ることができたと思います。しかしその一方で、最初に述べたマネタイズという面から見た場合、現時点では今ひとつ足りないものを感じています。

アプリを評価してもらうためには、とにかく手に取って遊んでもらわなければ始まりません。ですからこれまでは、まず第一歩としてダウンロードしてもらうということを目指してきました。その目標は達成されつつありますが、そこから売上につなげてビジネスとして成り立たせていくためには、これまでとは異なるノウハウが必要になるということを強く実感しています。クオリティは良いゲームの必要条件ではありますが、マネタイズも含めて考えた場合には、十分条件とは言えないわけです。

ただし、この事実は必ずしも日本のゲーム会社が海外で不利だということを表しているわけではありません。マネタイズのためには緻密なマーケティングが不可欠ですが、その点に関しては、日本の企業は非常に洗練されたノウハウを持っていると思います。日本企業のゲーム業界におけるマーケティングのノウハウは、コンシューマーゲームやフィーチャフォン向けゲームの時代から長年にわたって培ってきたもので、ソーシャルゲームの世界でも十分に活かすことができるはずです。

次に必要なものは何か?

では、マネタイズを進めていくためには具体的にどのようなポイントを押さえておかなければいけないのでしょうか。「Gゲー」でも日々試行錯誤を重ねながら様々なことにチャレンジしています。今回は、海外向けにアプリを提供していく上で押さえておくべき市場の傾向をいくつか紹介したいと思います。

ひとつはブランド力が非常に大きな影響を与えるということです。一度ブランドが確立できれば、後続のタイトルもどんどん遊んでもらえるようになります。しかし逆に、認知されるまでは評価されにくいという性質も持っています。ですから、何としてもランキングの上位、具体的にはトップ20くらいには食い込んで、多くのユーザーの目に触れるようにしなければいけません。

そのためにはプロモーションが非常に重要になってきます。これは適切なタイミングで、十分なリソースをかけて行うことが重要です。例えばAndroidアプリの場合には、Google Playの新着ランキングが非常に大きく影響してくるので、リリースして最初の1ヶ月にどれだけユーザーを獲得し、ブランドを確立できるのかが鍵になります。流行にうまく乗せるということも大切だと思います。流行に乗ったゲームはダウンロードしてもらいやすいので、初期段階で評価を得るための手段としては極めて効果的だからです。その場合、たくさんある同様のゲームの中でどのようにオリジナリティを出していくかが問題になるでしょう。

日本に比べると海外市場は課金に対するハードルが高い傾向にあるということも、マネタイズの難しさとなって現れています。仮にダウンロードして遊んでもらうことができたとしても、お金を払ってもらうためには、きちんとそれだけの価値があることが認められなければいけません。ですから、クオリティに関して簡単に妥協することはできないわけです。日本では大きな収益源であるガチャも、海外では流行らないと言われています。ランダム性が高く確実な対価が得られるとは限らない性質が、海外ユーザーには敬遠される傾向にあるからです。「G-Gee」のゲームでもガチャを導入しておりますが、日本で培ったノウハウをどう活かしていけばいいのかを試行錯誤をしているところです。

決めつけはNG、変化に対応できる柔軟さを

もうひとつ重要なのは、「○○をしなくてはいけない」というような決めつけは失敗の元だということです。1日で市場の状況が大きく変わることも珍しくないのがソーシャルゲームの世界なので、自分も1日でその変化に適応していかなければいけません。何が起きても対応できる柔軟さを持つことが大切です。

もちろん、目先の流行や短期的な市場の動向ばかりを追いかけるのではなく、根本の部分で技術やノウハウを積み重ねていくことも疎かにしてはいけません。土台になるものをしっかりと構築できていなければ、変化に対応していくこともできないからです。

「Gゲー」でも常にいろいろなチャレンジを行い、そのフィードバックを元にして日々研究を続けています。次回は、その具体的な実例などもご紹介できればと思っています。


取材日:2013.02.25