2013年5月29日(水)
日本のノウハウは海外でも通用する
カードバトル型ゲーム「Legend of Minerva」のリリースで手応えを実感
「Gゲーby GMO(以下Gゲー)」の国際展開ブランド「G-Gee(ジージー)」では、2012年にオリジナルタイトルがGoogle Playゲーム無料総合ランキングにおいて3ヶ国で1位を獲得するなどの大きな成果を上げ、2013年に入ってからは海外向けオリジナルタイトルのリリースを開始している。今回は、それら海外向けタイトルのリリースによって得られたグローバル展開に対する感触や、それを踏まえた現在のソーシャルゲーム市場の動向などを紹介する。
記事INDEX
前回の記事では、「G-Gee」ブランドで2つの新しいタイトルをリリースしたことを紹介しました。ひとつが箱庭系ゲームの「Giant Realms」で、もうひとつがカードバトル型ゲームの「Legend of Minerva」です。「Legend of Minerva」の方はリリースから間が無いため、売上の向上に向けた具体的な取り組みを実施するには至っていませんが、実際に運営を開始してみて実感できたことがいくつかあります。
ひとつは、海外市場でもカードバトル型ゲームは十分に受け入れられるということです。他社ブランドでも圧倒的な人気を誇っているタイトルが出ていますし、「Legend of Minerva」にしてもすでにコアなファンが付き始めています。日本のSAP(Social Application Provider)各社がグローバル展開を本格化させた当初は、海外市場での日本式のカードバトルについては疑心暗鬼であっただろうと思われますが、カードバトル型ゲームはすでに欧米でも一分野として認められ、今後も成長していく余地があるという手応えを感じています。
ガチャに関しても当初の予測とは異なり極めて好評で、熱中の度合いでいえば日本のユーザーにもひけをとらないくらいです。欧米ではイベントに関係なく利用されており、一人当たりの課金単価も高い傾向が見られます。
海外市場でカードバトル型ゲームがウケる理由も少しずつ分かってきました。このタイプのゲームでは、リアルタイムにユーザーの動向を把握しながら、ユーザーが今まさに欲しがっているものを提供していくという運営が必要になります。したがって、成功の鍵となるのは、ユーザーが何を望んでいるのかを的確に把握する分析力です。日本のベンダーは国内でそのノウハウを蓄積してきていますが、海外ではこのような運営をするゲームはこれまでにあまり無かったので、その点で日本が一歩リードしているといえるでしょう。
日本のSAPのノウハウに対する国際的な注目度も上がってきていることを感じています。例えば2013年4月8日、スマートフォンやWebブラウザ向けのゲームをリリースしている米国のKabam社が、日本国内のディベロッパーの海外進出を支援する目的で5000万ドルの基金の設立を発表しました。日本をはじめとするアジアのゲームベンダーは、特にソーシャルゲームやオンラインゲームの分野で高い実績を上げています。カードバトル型ゲームもその成功例のひとつです。これらの実績とノウハウを海外資本が認め、その獲得に本気で取り組み始めたということだと思います。
これは日本にとっての大きなチャンスといえます。日本国内のソーシャルゲーム市場は急速な成長を遂げてきましたが、その結果として一部ではそろそろ頭打ちになるのではないかという気配も見えてきています。したがって、本格的に頭打ちになってしまう前にグローバル市場で実績を上げ、成功できるパターンを築いていかなければいけません。今がそのチャレンジの時期といえるでしょう。
冷静に市場の動向を眺めてみると、すでに国内からも成功のためのパターンを見つけたSAPが出てきているように見えます。例えば、あるSAPからリリースされている人気ゲームの売上チャートを見ると、どのゲームも似た形のグラフになっていることに気がつきます。これは適切なプロモーションによってユーザーの動向をしっかり掴んでいることの表れでしょう。このような良いモデルケースを見つけて参考にすることも重要だと思います。
そうはいっても、実績の無い段階から一気に勝負に出るのはリスクが高すぎます。リスクを抑えて成功を勝ち取るためには、正しい手順を踏むことも大切です。「Legend of Minerva」の場合、まずは日本で実践してきた運営方法と同様のアプローチを取りながら、どの部分のノウハウを活かすことができるのかを見極めることから始める予定でいます。例えば、欧米のユーザーもガチャを利用する傾向にあると書きましたが、多様にあるイベントとガチャの組み合わせで、何が一番受け入れられるかという点については、日々研究を続けている状況です。他社のタイトルの事例でも、ガチャやイベントは受け入れられないという話もあれば、成功しているという話もあります。これは実際に自分達でやってみなければ分からないことです。
このような地道な研究は、今後の発展ために不可欠なものです。正しいアプローチを取ればカードバトル型ゲームはこれからもっと伸びるだろうという確信を持っているので、Gゲーとしても本腰を入れて臨んでいく予定です。その上で、適切なタイミングを見極めながらプロモーションにも力を入れていきたいと考えています。
もうひとつ重点的に行わなければいけないと考えているのが、パフォーマンスの向上です。グローバル市場は裾野が広く、いろいろなタイプのユーザーに遊んでもらうことが前提になります。そのときに全体としての満足度を上げるにはパフォーマンスの向上が不可欠なわけです。特に「Legend of Minerva」などは、同系統の人気ゲームに比べるとまだ動作速度が遅い部分があるので、改善に向けたチューニングに取り組んでいる最中です。
異なるタイプのゲームで培ったノウハウをうまく融合させていくことができないかとも考えています。例えば、「Giant Realms」については近々大きなアップデートを計画しており、バトルや合成といった新機能が追加される予定になっています。同タイトルは系統としては箱庭系のゲームになるのですが、そこにカードバトル型ゲームの要素を導入してみようという試みです。今後のレポートで、これらの試みがどのような結果につながったのかを紹介できればと思っています。
ソーシャルゲームの世界でも、「いいモノを作る」というモノ作りの原点は極めて重要です。ユーザーが求めているクオリティは極めて高く、それをクリアできなければすぐに飽きられてしまう厳しさがあるからです。しかしその一方で、ただ「いいモノを作る」というだけでは不十分だということも重ね重ね実感しています。
ユーザーを獲得し、その上でしっかりと売上につなげていくためには、緻密なマーケティングによる運営が不可欠です。運営側は常にユーザーの動向を意識していなければならず、気が休まる暇が無いという難しさがあるわけですが、それを実践できるノウハウを持っているという事実がグローバルで戦う上では大きな武器になるはずです。
取材日:2013.04.22
GMOゲームセンター
GMOインターネットグループ株式会社
2010年11月26日、Android端末向けのゲームアプリマーケットである「Gゲー by GMO」のβ版をリリース。スマートフォンの急速な普及が進む中、事業のさらなる強化と事業展開の迅速化を図ることを目的として、2011年6月1日に合弁会社を設立。続々と新規タイトルを世に送り出している。