技術ブログ
2013年9月4日(水)
調査票のいらない調査「Scanamind(スキャナマインド)」Vol.6
Scanamindの調査事例 (後編)
第6回は、前回に引き続き、Scanamindを使って実施した日本・中国におけるコカ・コーラのブランドイメージ調査事例についてレポートいたします。
記事INDEX
前回は、日本および中国におけるコカ・コーラのブランドイメージ構造抽出を目的として、2013年1月にGMOリサーチ株式会社がScanamindを用いて実施した調査概要について解説しましたが、今回は調査結果について、より詳しく見ていきたいと思います。これらを通じて、日本と中国の類似点および相違点を明確にするとともに、日中それぞれの市場の成熟度や消費文化の違いも浮き彫りにします。
■GMOリサーチ株式会社自主調査
[1]目的:
コカ・コーラに対する消費者の概念構造の可視化(マッピング)
[2]調査時期:
[日本]2013年1月21~22日
[中国]2013年1月24~28日
[3]調査対象:
[日本]GMOリサーチ保有オンラインパネルinfoQ(男女20~60歳)
[中国]GMOリサーチクラウドパネルChina Cloud Panel(男女20~60歳)
[4]有効回答数:
[日本]2,221件,[中国]2,357件
以下の2つの概念構造マップが、日本と中国における調査結果をScanamindで可視化したものです。 中国での調査結果は、中国に居住する調査対象者の回答をそのままマッピングしたものです。そのため、本来は中国語で表示されるべきものですが、ここではScanamindの機能を使い、日本語に翻訳したデータを反映させることで、日本語で表示しています。
(1)日本と中国におけるコカ・コーラに対する消費者の概念構造
日本と中国の概念構造全体を比較した結果(類似点、相違点)は以下になります。
【1】類似点について
【類似点】概念構造およびその内容にはほとんど差がない
概念構造全体は、コカ・コーラという製品そのものについての「直接的イメージ」とコカ・コーラの利用環境や一緒に食べるものといった製品周辺の「間接的・付随的イメージ」に大きく二分され、前者が「機能的」なものと「感覚的」なものに大別されるという点では、ほとんど差はありません(図3)(図4)。また、概念構造内のカテゴリも日本と中国で、ほぼ同一の内容となっています(表1)。
●日本と中国における概念構造のカテゴライズ
【2】相違点について
【相違点】中国では、日本ほど明確なコカ・コーラのイメージが形成されていない
日中の概念構造は類似していますが、概念そのものの広がり方の度合いに差があり、日本と中国のアウトプットの縮尺を揃えると図5のようになります。Scanamindのマッピング図では、中心から離れるほど特徴の強い概念を表し、概念構造内における際立った概念を意味します。したがって、日本では概念が広い範囲に分散していることから、中国と比較すると全体的に際立った特徴を持つ概念が多いということが分かります。言い換えると、中国では、日本ほど強く明確なコカ・コーラのイメージが調査対象者全体で形成されていないと言えるのではないでしょうか。
※図5以外の中国のアウトプットは、日本と同一縮尺で表示すると判読しにくいため、拡大しています。
●日本と中国を同一縮尺に揃えたアウトプット
【相違点】同じ1位でも、日本では中国より約2倍も出現率の差がある
上記の相違点は、挙げられた概念の調査対象者全体に占める割合の差異にもその一端が現れます。表2は日本の概念の出現率トップ10、表3は中国の概念の出現率トップ10ですが、1位の概念の出現率には約2倍の差があります。通常、特徴のある概念のマインドシェアが高いため、日本と中国における概念の強さには濃淡があることが分かります。
次に、以下の3つの個別イメージについて日中で比較してみました。
【1】高カロリーなイメージについて
【相違点】日本ではファーストフードとの関連で、高カロリーなイメージが想起されている
日本では、ファーストフードの周辺に「太る」「ダイエット」「カロリー」「肥満」といった高カロリーなイメージが付随しています(図6左)。これは「コカ・コーラがファーストフード店で提供される代表的なドリンクであること」や「ファーストフードにおいてコカ・コーラと同時に消費されるハンバーガーやポテトが高カロリーなこと」が結びつき、これらのイメージが醸成されていると考えられます。
しかし、中国ではこの高カロリーなイメージが見受けられません(図6右)。「ハンバーガー」「フライドポテト」やファーストフードチェーン名が挙がっていることから「コカ・コーラがファーストフード店で提供される代表的ドリンクであること」は認識されていますが、ファーストフードに対して高カロリーのイメージは存在していないようです。中国でのファーストフードは、先進国で考えられているジャンクフードのイメージと異なる可能性が考えられます。
【2】「うれしい」イメージについて
【相違点】中国では旧正月など特別な場面でコカ・コーラが飲まれ、それが「うれしい」感情を想起させている
中国では、「ファーストフード」と「おいしい」に挟まれた「うれしい」カテゴリが存在します。「嬉しい」「楽しい」「すばらしい」「幸せ」といった概念(図7右 黒丸)が一定の想起率で並び、まとまった一つの大きな概念を形成(図7右 赤く塗られた部分)しています。この周辺には「友人」「旧正月」「若者」「自宅」といった「うれしい」シチュエーションの概念が存在します(図7右 赤点丸)。おそらく友人と語り合ったり、旧正月に帰省して自宅で家族や親類と過ごしたりといった「うれしい」状況で、コカ・コーラが飲まれていることが考えられます。つまり、中国では日常生活で消費されるとともに、何らかの「うれしい」特別な場面の中にコカ・コーラが存在することが推察されます。「コカ・コーラ鶏手羽」という料理も、このような「うれしい」場面で消費されるのではないでしょうか。
日本でも「楽しい」という概念そのものは登場しますが、それは中国のように厚みを持った概念ではなく、極めて小さい(図7左 黒丸)ものです。周辺に「パーティー」「若者」といったシチュエーションが見られます(図7左 赤点丸)が、ベクトルとしてはファーストフードと同じ並びに存在することから、若年層が仲間とファーストフードで過ごす際にコカ・コーラを飲むというイメージが強いと思われます。
家族や友人とのつながりが「うれしい」感情を呼び起こし、団欒の中でコカ・コーラを消費するという中国における消費スタイルは、高度経済成長期の日本を彷彿とさせます。家族構成や消費スタイルが変化した日本においては、コカ・コーラは若者が日常生活でファーストフードとともに当たり前に消費する存在となり、コカ・コーラ消費の背景にかつて存在した「うれしい」感情が消滅しようとしていると言えるのではないでしょうか。
【3】「色」についてのイメージ
【類似点】黒に類する概念は日中で大きな差はない
日本も中国も「黒い」「黒」といった黒の概念はパッケージのカテゴリ に含まれます。付近には「ペットボトル」「ボトル」「缶」「瓶」といった 概念がともに存在し、おそらくコカ・コーラゼロ/コカ・コーラゼロフリーを 代表とする黒いパッケージがイメージされていると考えられます。 もちろん、コカ・コーラそのものの黒さが想起されている 可能性もあります。 他の概念との位置関係を見ても、 日本と中国で大きな差はありません。
【相違点】赤に類する概念は日中で異なっている
黒と比較すると、「赤」「赤い」「赤色」といった赤の概念は、 日本と中国で大きな差が存在します。日本では、赤の概念は 黒に近いパッケージのカテゴリに存在します。これに対して、 中国の赤はパッケージカテゴリの中にはなく、かなり離れた ファーストフードカテゴリに存在するのが特徴となっています。 そのため、マクドナルド、KFCといったファーストフードのビッグ ブランドのブランドカラーも赤であることから、そちらのイメージが強いことが可能性として考えられます。
■全体的構造を見ると、日中のコカ・コーラについてのイメージ構造は似通っていると言えます。ただしイメージの強固さという点では、日本の方が強いようです。
■カテゴリレベルでは、日本にある高カロリーな概念が中国には存在しない点、中国にある「うれしい」カテゴリが日本に存在しない点、赤色のイメージが日中で異なっている点などが挙げられます。
■調査票を使用しなくても、日中のコカ・コーラについてのイメージ構造が明確に抽出されることが検証されました。それらを実現したScanamindの特長は以下のようにまとめることができます。
次回は、Scanamindの調査事例で見えてきた日中比較について、MROCを使ってさらに掘り下げた結果を報告したいと思います。
米国・ドイツ・フランス・英国でも同社の特許権が成立しています。
x ※「Scanamind」は株式会社クリエイティブ・ブレインズの登録商標です(登録番号第5109952号)。また世界主要35カ国における同社の登録商標です(国際登録第1131308号)。
※「Scanamind」公式サイトhttp://www.scanamind.jp/
「Scanamind」についての詳細お問い合わせは以下まで。
GMOリサーチ株式会社 JMI事業本部 担当山田
Tel.03-5784-1100
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