技術ブログ
2014年10月29日(水)
クリエイティブ・デザインを評価する「Scanadesign (スキャナデザイン)」Vol.4
概念構造マップの見方と活用
記事INDEX
調査自体は、これまで紹介したものと同じですが、以下のように流れを改めて解説させていただきます。調査対象者は自分が好きなバッグを選択するという②③のプロセスを経ることでバッグに対するイメージを心の中に形成する「画像の表象化」を自然に完了します。前回のレポートで解説したように、調査対象者はこうした表象化のプロセスを経ているからこそ、バイアスに左右されない短時間での直感的な評価が可能になるのです。
[1]目的:バッグのデザインのイメージ構造の可視化(マッピング)
[2]調査時期:2012年5月14~15日
[3]調査対象:GMOリサーチ保有オンラインパネルinfoQ(日本国内 女性のみ20~59歳)
[4]有効回答数:2,313件
■概念構造マップの形式と読み解き方
ScanadesignはScanamindの拡張版であるため、アウトプットである概念構造マップはScanamindと同様、調査対象者が挙げた言葉(概念)および調査設計者が提示した画像を円形に配置したものになります。そのデータ処理過程もScanamindと同じく量子数理を利用(※1)し、その読み解き方も同様となります。読み解き方の要点(※2)を以下に紹介します。
(※1)詳細は https://www.gmo.jp/report/marketing/34/index.php 参照。
(※2)詳細は https://www.gmo.jp/report/marketing/32/index.php 参照。
■Scanadesignの概念構造マップで分かること
ScanadesignはScanamindから拡張されて画像が加わったことにより、調査対象者に挙げられた言葉が表す概念を、具体的な形に視覚化することが可能になりました。本記事で取り上げるバッグの調査事例では、例えば「カジュアル」「シック」といった言葉が、具体的にどのようなデザインのバッグに代表される概念であるのかを、ひと目で理解することができ、またそれがどのような概念に近いのかも把握できます。(図3、図4)。
バッグのような一般的な製品の場合は、誰もが想起するような概念とイメージ(画像)の関係性になることが多いのですが、例えば、ニッチな商品や新しい分野の商品を「Scanadesign」で調査すると、新たな発見が見えてくるかもしれません。
■バッグのデザインの色構造
概念構造マップにおいてバッグの画像だけを選択すると、一目で色彩において対立する概念があることが分かります。下部には「黒」「こげ茶」「茶」といった暗めのバッグが集中し、それとは対照的に、上部には「青」「ピンク」「白」「緑」といった黒・茶系以外の明るい色のバッグが分布しています(図5)。これらは中心から見て正反対に位置することから、対立する概念だと言えるでしょう。
つまり、日本人女性はバッグの色について、一般的な色彩の概念構造とはまったく異なった「黒・茶 ⇔ 黒・茶以外の色」という概念構造を有していることが分かると思います(図6)。
それでは、このバッグ特有の色構造の背景には何があるのでしょうか?
バッグの画像だけの概念構造マップ(図5)に、12個の集合概念を重ねると、図7のようになります。「黒」「こげ茶」「茶」といった暗めの色のバッグが集中している領域は「革/防水・防汚」「丈夫」といった『丈夫な革素材の概念』と重なり合うと言えるでしょう。これとは対照的に、上部にある「青」「ピンク」「白」「緑」といった黒・茶系以外の明るい色のバッグが分布する領域は「布」「軽さ」という『布やビニールをはじめとする薄く軽い素材の概念』が当てはまります。
すなわち、「黒・茶 ⇔ 黒・茶以外の色」というバッグに関する色彩の概念構造は、「革 ⇔ 革以外」というバッグの素材に関する概念構造が背景にあることが分かると思います。フォーマルな場面で用いられるバッグは、上品で高級感のある革素材である場合がほとんどで、黒・茶色(※3)が多いからだと考えられます。
同じような理由で、例えば、靴を対象にScanadesignで調査しても、似たような概念構造が見られるのではないでしょうか。
(※3)黒・茶色は汚れが目立たず、無難で使い回しも利くことから、購入にあたって失敗したくない高級な革製品は選ばれやすいと思われます。
バッグの色彩に関する概念構造の事例では、バッグの色が「素材」という軸を背景に形成されていましたが、バッグ全体の概念構造を見ると、素材以外にも複数の概念軸が存在していることが 分かります(図8)。
一例を挙げると、概念構造マップの右上には「かわいい」「きれい」「シンプル・上品」といった情緒的イメージが挙げられ、正反対の左下には「持ちやすい」「大容量」「出し入れ」という用途に基づく機能が挙げられています。前者が感覚的な右脳概念を代表するのに対して、後者は機能的な左脳概念を提示していると言えます。
他にも複数の概念軸が存在し、それぞれが絡み合ってバッグの概念をつくり上げています。
■Scanadesignのアウトプットである概念構造マップでは、調査対象者が挙げた言葉が表す概念を、画像によって具体的な形に視覚化することが可能である。
■上記とは逆に、画像から得られる商品の色構造の背景を読み解くような使い方もできる。
■ある商品の概念は、複数の概念軸が複雑に絡み合って形成されていることが分かる。すなわち、Scanadesignによって、ある商品を構成している複数の概念軸の存在とその複雑に絡み合った関係性を理解することができる。
■Scanadesignは調査票を用意しなくても、上記のようにありのままの概念を可視化することが可能である。
次回は、いよいよ来年度初頭にリリースされるScanadesignの進化型バージョンを紹介する予定です。
米国・ドイツ・フランス・英国でも同社の特許権が成立しています。
※「Scanamind」は株式会社クリエイティブ・ブレインズの登録商標です(登録番号第5109952号)。また世界主要35カ国における同社の登録商標です(国際登録第1131308号)。
※「Scanamind」公式サイトhttp://www.scanamind.jp/
「Scanadesign」についての詳細問合せは以下まで。
GMOリサーチ株式会社 JMI事業本部 担当山本
Tel.03-5784-1100
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