技術ブログ
2014年12月3日(水)
クリエイティブ・デザインを評価する「Scanadesign (スキャナデザイン)」Vol.5
新バージョンの紹介
記事INDEX
ScanamindおよびScanadesignは、調査対象者の「ありのままの概念構造を可視化すること」を目的としています。そのため、Scanamindでは調査対象者自身がその場で評価項目を作成し、Scanadesignではそれに加えてリサーチャーが提示した画像を表象化する工夫が施されています。しかしながら、これまでのScanadesign(旧バージョン)では以下の課題があったため、新バージョン開発に取り組むことになりました。
■旧バージョン
リサーチャーが準備したデザインをもとにクリエイティブ評価を行うとき、調査対象者が画像のどの部分に着目して判断したのかという情報を捕捉できていなかった(図1左)。
■新バージョン
評価対象となるデザインについて、調査対象者が「好きな(または嫌いな)部分を自由に指定して評価できる部分指標」を採用し、リサーチャーが事前に準備した画像全体のイメージに縛られることなく、調査対象者の視点を把握することが可能となった(図1右)。
新バージョンのScanadesignを使ったクリエイティブ評価の流れは以下となります。
①評価対象となるデザイン全体に対する評価を4段階で実施。
②次に、調査対象者に評価対象となるデザインのもっとも好きな部分(調査目的によっては嫌いな部分を指定させることも可能)をマウスで指定する。
③続いて、指定した部分について「何が好きか」「なぜ好きか」といった、指定した理由や背景にあたる情報を調査対象者に3つ記入してもらう。
④調査対象者に、属性その他の情報も回答してもらう。
上記①~④の「調査の流れ」は一つのデザインについて評価を行ったものです。しかし、クリエイティブ評価を行う場合、最初から一つのデザインに絞り込むケースは少なく、通常は複数のデザインを比較対照しながら絞り込みを進めていきます。新バージョンのScanadesignにおいても、各調査対象者に複数のデザインを別々に提示したり、最初に複数のデザインを提示して好きなものを選択してもらったりすることにより、複数のデザイン評価を行うことが可能です。
それは、たとえば、以下のような調査設計になります。
1. 2,000名の調査対象者に5種類のデザインをランダムに提示する。
2. 上記①~④の流れで調査対象者がそれぞれのデザイン評価を行った後、好きな部分、好きな部分の詳細や要因を挙げてもらう。
旧バージョンでは、リサーチャーが画像を提示するため表象化の段階を経る必要がありましたが、新バージョンでも、調査対象者が各デザインのもっとも好きな部分を選択するうちに表象化が終了し、その詳細や要因を挙げてもらう過程がスムーズに進行する仕組みになっています。
■調査を通じて取得するデータ
調査対象者から取得するデータは図2のように以下の3種類(全体評価(4段階評価)/好きな部分の抽出/好きな部分の詳細・好きな理由)になります。
旧バージョンでは、すべての評価対象を対にした4段階評価を調査対象者が行うことで、挙げられた概念の関係性を可視化していました。
しかし新バージョンでは、
・デザイン全体に対する4段階評価
・○で指定された「もっとも好きな部分」の箇所
・「もっとも好きな部分」で挙げられた言葉の数、およびそれらを合計した、デザイン全体の言葉の数
という3つだけで可視化できるので、調査対象者の負担は大幅に軽減されます。
また、Scanamindおよび旧バージョンのScanadesignは、概念相互のすべての組合せを調査対象者から4段階評価してもらうことで概念の位置を決定していました。しかし、新バージョンは「もっとも好きな部分」で挙げられた言葉(概念)の数によってそれぞれの位置を決定します。またデザイン全体に対する4段階評価は「好き」「嫌い」といったセグメントを分割するための設問です。このように、概念の位置決定に用いるデータは異なりますが、算出する手法は従来と同じ量子数理を用います。
新バージョンのアウトプットには「部分評価」と「全体評価」があるのも、旧バージョンとは異なるところです。
■部分評価
評価対象となるデザインに対して、調査対象者が自由に指定した箇所(好きな部分)を把握できます。さらに、調査対象者が指定した好きな部分では、表記された3つの言葉の頻度が高いほど大きなフォントで表示されるため、着目された理由を知ることができます。
■全体評価
全体評価では、評価対象となるすべてのデザインについて、Scanamind同様、円形に画像、言葉が配置された概念構造マップになります(図4)。左右に「かわいい」⇔「かっこいい・シャープ」という対照的な概念が存在し、上下方向には「大人っぽい」「おしゃれ」な概念と「キュート」で「元気・明るい」概念とが対立していることが分かります。それぞれの概念に近いファッションがどのようなものかを把握することも可能です。
調査対象者が各デザインのもっとも好きな部分に対してのみ言葉を挙げているのに、全体評価の概念構造マップ(図4)は、評価対象となるデザインそのものをマッピングできるのはなぜでしょうか?実は、新バージョンは好きな部分の部分評価で挙げられた言葉の数を合成して全体評価としています。
以下の図5では、部分評価に含まれる「かわいい」が合計31個、「セクシー」が合計15個あり、それらが全体評価に含まれる言葉の数になります。全体評価に含まれる概念は、各部分評価という形ですべて包含されるという考え方が根底にあるのです。
また、全体評価の画面に表示される各デザインは、各々でもっとも好きな部分に対して挙げられた言葉の集合としてその位置が計算されています。したがって、各デザインの位置を計算する元となっているもっとも好きな部分もマッピングが可能であり、個別のデザインをクリックすることで、もっとも好きな部分の位置も表示することができるのです(図6)。この新バージョン独自の機能に関しては、次回の連載で詳細に解説します。
新バージョンのScanadesignは、上記のようなファッションだけでなく、製品やロゴマークなどのあらゆるデザイン評価に活用することができます。たとえば、新車のデザインを評価する時に、現状をA案、新しいデザインをB案、新しいデザインの別バージョンをC案、競合メーカーをD案、E案などとします。この5案についてデザイン全体の評価をすることは従来の定量・定性調査でも可能でした。
しかし、新バージョンのScanadesignを使うと、「なんとなく」「かっこいい」などの曖昧な全体評価ではなく、具体的にどの部分が競合メーカーに対して評価が高いか低いか、さらには改善が必要かなどもビジュアルを追って比較できるようになります。さらに、全体評価の画面においては、新しいデザイン案のポジショニングを把握できるばかりか、全体評価の中での個別の評価がどのようになっているかも分かるため、クリエイティブ評価の有用なツールとしても利用可能です。
①新バージョンのScanadesignの開発目的は、調査対象者がデザイン評価を行う際、デザインのどの部分に着目して判断したかという情報を捕捉することにある。デザイン全体の中で注目されている部分に切り分けた評価が可能で、それぞれの部分の概念構造を把握できるため、クリエイティブ評価の有用なツールとして使用されている。
②新バージョンは、調査対象者がすべての評価対象を対とした4段階評価を行わず、
・デザイン全体に対する4段階評価
・○で指定された「もっとも好きな部分」の箇所
・「もっとも好きな部分」で挙げられた言葉の数、およびそれらを合計した、デザイン全体の言葉の数 の3点で分析を行うため、調査対象者の負担を大幅に軽減可能。
③アウトプットには「部分評価」「全体評価」があり、「部分評価」では各々のデザインに対する評価、「全体評価」ではすべてのデザインおよびもっとも好きな部分の概念構造マップを見ることができる。
次回は、新バージョンのScanadesign分析方法と、「全体評価」の中で「部分評価」を行う新しいアウトプットについて詳細に解説します。
米国・ドイツ・フランス・英国でも同社の特許権が成立しています。
※「Scanamind」は株式会社クリエイティブ・ブレインズの登録商標です(登録番号第5109952号)。また世界主要35カ国における同社の登録商標です(国際登録第1131308号)。
※「Scanadesign」に関わる技術は株式会社クリエイティブ・ブレインズが特許法に基づく特許権を取得しています。(特許4824837号,特許3278415号,特許3417941号,特許3638943号)
また米国/中国/欧州各国にも特許出願中です。
※「Scanadesign」は株式会社クリエイティブ・ブレインズの商標です。
※「Scanamind」公式サイトhttp://www.scanamind.jp/
「Scanadesign」についての詳細問合せは以下まで。
GMOリサーチ株式会社 JMI事業本部 担当山本
Tel.03-5784-1100
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