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2011年3月31日(木)
マーケティング・リサーチ実践的活用法 Vol.5(後編)
定量調査の選択肢を設定するうえで重要となる「尺度」の考え方をベースに、定量調査の調査票に使われる回答方式の種類をはじめ、調査票の質問文作成のポイントや留意点について述べていきたいと思います。
※ このレポートは、ジャパンマーケットインテリジェンス株式会社とGMOリサーチ株式会社の共同研究です。
記事INDEX
Vol.5前編では、定量調査の選択肢を設定するうえで重要となる「尺度」の考え方について述べましたが、後編では、この考え方をベースに、定量調査の調査票に使われる回答方式の種類をはじめ、調査票の質問文作成のポイントや留意点について述べていきたいと思います。
定量調査において、調査票の質問に対する回答方式には、下図のように、与えられた選択肢の中から当てはまるものを回答してもらう『選択回答』と、文字通り、質問に対して自由に回答してもらう『自由回答』の2つに大きく分類できます。『選択回答』には、当てはまるものを1つだけ選択してもらう「単数回答」、当てはまるものをいくつでも回答してもらう「複数回答」があり、『自由回答』には、文章や言葉で回答してもらう「文字回答」、数字で回答してもらう「数量回答」があります。
図1 回答方式の種類
調査票の質問文と回答方式は、前編で紹介した「尺度」を十分考慮しながら作成する必要がありますが、それらの例をいくつか紹介します。
◆選択回答法の例1.選択回答法(単数回答)と名義尺度下記の調査票の一番目は、調査対象者に2つの選択肢の中から当てはまるものを回答してもらう「二項選択」の回答方式で、二番目は3つ以上の選択肢の中から当てはまるものを回答してもらう「多項選択」の回答方式です。いずれも順序や間隔が認められない名義尺度です。
図2 選択回答法(単数回答)と名義尺度
2.選択回答法(単数回答)と間隔尺度
下記の調査票は選択肢の中から、当てはまる年収を回答してもらうもので、その選択肢は間隔尺度です。選択肢がそれぞれ等間隔となっているのがポイントで、その後の集計時に、名義尺度などに比べて平均値などの演算が活用できるようになります。
図3 選択回答法(単数回答)と間隔尺度
3.間隔尺度(中央あり/中央なしの場合)
下記の調査票の選択肢も間隔尺度ですが、一番目の選択肢には中央(5つのうち3番目が中央)があり、二番目には回答選択肢には中央がない場合の例です。
図4 間隔尺度
4.選択回答法(複数回答)と名義尺度
下記の調査票の選択肢は名義尺度ですが、一番目の調査票の選択肢は当てはまるものをいくつでも回答できる「無制限方式」で、二番目の調査票の選択肢は回答を3つまでに制限したものです(「制限方式」)。このような質問の場合は多くの回答が挙げられる可能性があり、その後の集計結果が理解し難くなるので、制限をつけた方が適切かと思います。
図5 選択回答法(複数回答)と名義尺度
5.選択回答法(複数回答から単数回答に絞り込む)と名義尺度
下記の回答方式は、少しテクニカルではありますが、まず調査対象者にいくつか候補を挙げさせて、一つに絞らせる方法です。この方式によってその人が考える最大の理由を導きやすくなります。
図6 選択回答法(複数回答から単数回答に絞り込む)と名義尺度
◆自由回答法の例1.数量回答と順序尺度
下の2つは、全てを順位付ける完全順位方式、一部の順位を付ける一部順位方式とその回答方式は若干異なりますが、どちらも順序尺度の例です。
図7 数量回答と順序尺度①
図8 数量回答と順序尺度②
2.数量回答と比尺度/文字回答と名義尺度
下記、一番目の調査票は、数値で回答するものであり、そのまま比尺度となります。二番目の調査票の回答方式は文字回答ですが、これは回答結果が同じもの同士を分類し、アフターコーディング(挙げられた項目が全体の何パーセントとして集計)することで名義尺度として集計することができます。
図9 数量回答と比尺度&文字回答と名義尺度
こうした尺度も万能ではないので、選択肢の設定は慎重に行われるべきです。そこで尺度と選択肢に関する留意点を以下に紹介します。
以下のような間隔尺度では、選択肢が5段階(中央あり)の場合と4段階(中央なし)の場合では回答結果が異なってきます。要するに、尺度の間隔が異なれば、選択肢が同じ表現でも回答結果が同じになると限りません
(評価段階/尺度の間隔が重要)。
図10 尺度/選択肢の留意点(1)
次は選択肢の設定の仕方についてです。この図の中では◯の大きさが大きいほど回答者が多いと思ってください。左側では「その他」が多いですが、右側では「自動販売機」を選択肢に入れたので、「その他」を選んでいた人や、コンビニやスーパーに設置されている自販機で購入している人の一部が「自動販売機」を選んだため、「自動販売機」の回答者数が減少しています。つまり、選択肢が増減すれば、同じ表現の選択肢でも、回答結果が異なる可能性が高いと言えるのです
(選択肢の表現・個数が重要)。
図11 尺度/選択肢の留意点(2)
最後に調査票作成の留意点を述べたいと思います。
◆調査票作成の留意点1.レイアウト、ボリュームを考える。
→レイアウトが見にくい、あるいはボリュームが多いための途中拒否・回答拒否を回避
2.調査票作成前に、調査票の全体像を知るために、質問フロー(質問項目とその順番の一覧表)を作成する。
3.事実を尋ねる質問と感想・意見を聞く質問がある場合、事実を先に聞く方が調査対象者は回答しやすい。
- 事実に関する質問とは
購入経験、購入場所、所有の有無、使用量など
→正確な回答を得ることが重要 - 意識に関する質問とは
メーカー/ブランド/銘柄の認知、購入意向、使用評価、イメージ、製品に対する意見、広告内容の想起など
→個々の調査対象者について、同じ条件のもとで意識面の反応を見ることが重要
4. 「ですます調」か「である調」にワーディングを統一。また、地位の高い人以外、変にかしこまったワーディングにしない(ギクシャクしてしまう)
5.質問文が、わかりやすいこと/答えやすいこと/簡潔であること/言いまわしがくどくないこと/誤解を与えないこと。
6.単数回答(SA)、複数回答(MA)、自由回答(OA)等、回答方式を明確にすること。
◆質問文作成の主な留意点1.調査目的を果たせるように、必要な内容が抜けないようにする。
2.一読してわかるように、質問文はできるだけ短くする。
3.業界用語や専門用語を避けて、誰でも理解できるような平易な用語を使う。
4.人によって理解が異なるような、定義がはっきりしない用語を避ける。
5.何について回答すればよいか迷ってしまうなど、不明確な聞き方はしない。
6.常態について質問しているのか、実態について質問しているのかがわかるように、「普段(常態)」と「最近(実態)」を使い分ける。
7.調査対象者(一般消費者)が記憶していないことを聞かない。
8.2つの質問内容を1つの質問文に含めない。
これまで5回にわたってマーケティングリサーチの基本から実践的な活用法について述べてきました。
マーケティングリサーチを実施する際に最も重要なことは、第3回目にも述べたように、マーケティング課題をリサーチ課題に置き換えるというプロセスです(マーケティング課題のリサーチ化)。そのプロセスにおいて、調査の背景に対する理解を深めることは、その後のマーケティング課題の解決策を講じやすくします。掲げられた調査の目的は、調査の結論を導くものであり、また、課題解決のための仮説を設定することは、適切な調査票を作成するために欠かせない作業となり、その調査票は調査企画を最も具現化したものになります。
今後、実際にマーケティングリサーチに取り組むときに、ぜひとも参考にしていいただければ幸いです。
2010.12.03
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