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社内レポート

技術ブログ

2012年5月23日(水)

アメリカ発祥の新しいマーケティングリサーチ手法「MROC(エムロック)」 Vol.2

適切な参加者を抽出して成果を上げる、MROCのスクリーニング手法について

MROCの運営で成果を上げるには、オンラインコミュニティ内で高感度かつ積極的な発言ができる資質を持つモニターの選出がポイントとなる。

そこでGMOリサーチ株式会社が運営する「オンライン・リサーチ・コミュニティ・リクルーティング byGMO」のリクルーティングサービスを例に、MROCにふさわしい参加者を抽出するためのスクリーニング(ふるい分け)手法についてレポートいたします。

※このレポートは、GMOジャパンマーケットインテリジェンス株式会社とGMOリサーチ株式会社の共同研究です。

記事INDEX

「オンライン・リサーチ・コミュニティ・リクルーティング byGMO」のサービス開発背景

(1)MROCとオフライン定性調査との違い
MROC(Market/Marketing Research Online Community)とは、リサーチを目的としたインターネット上でのクローズドなコミュニティで行われる、特定のテーマに基づいたディスカッションから、消費者のインサイト(本音・心の声)を洞察するマーケティング・リサーチの手法です。

これまでにない成果が期待できるリサーチ手法として注目されているMROCですが、以下に挙げたようにグループインタビューなどの従来のオフライン定性調査とは異なることに注意する必要があります。

<MROCの特徴>

1.調査対象者同士が顔を合わせない
・同じ空間にいるという一体感を創出しにくい。
・モデレータ(司会進行役)がオフラインで貴重な情報ソースとしていた言葉のトーンや表情がよめない。

2.調査刺激物(調査対象となる製品)を提示しにくい
・画像や動画だけでは視覚的な情報のみに限定されてしまう。

3.スムーズにコミュニケーションできない可能性がある
・グループインタビューでは一つの空間内に全員がいるため、ある人の発言を遮らずに聞いたうえで自分の意見を述べる。しかし、MROCは別の時間にそれぞれがバラバラに書き込みを行うため、調査対象者が自分の書き込みだけを中心に話の流れを見る傾向があり、スムーズにコミュニケーションできない可能性がある。


また、MROCでは、「調査対象者」とディスカッションを進行する「モデレータ」がオンラインコミュニティ参加上でのルール(調査対象者への配慮や書き込み方法)を理解して取り組むことで、初めて有用なインサイトを得ることができると言われています。

(2)MROCでは、これまで以上に対象者を絞ってリクルーティングする必要がある
上記の違いからも分かるよう、これまでオフライン定性調査において「調査に向いている」対象者をリクルーティングするための基準を、MROCにそのまま適用してもうまくいかないことを理解していただけるのではないでしょうか。

MROCに適した調査対象者の選定基準を新たに作成してリクルーティングする必要があるといえます。

では、MROCに適した調査対象者とは、どのような属性を持つか?以下のように想定してみました。


<MROCに適した調査対象者層の想定>
・細かい作業を熱心に続けられること。
(毎日書き込みをしたり、調査主体から与えられたタスクをこなしてもらったりする必要があるため)

・オンライン上でのやりとりにおいて、初対面でも違和感を抱かず、その後も他の調査対象者とスムーズに意見交換ができる人。

・デジタル機器の扱いに問題がない人。
(eエスノグラフィ(観察調査)で製品利用状況などを写真や動画で撮影してアップしてもらうため)

「オンライン・リサーチ・コミュニティ・リクルーティング byGMO」とは?

(1)ダブルスクリーニングシステムでMROCに最適な調査対象者を抽出
上記で想定したMROCにふさわしい資質を持った対象者を発掘していくために、GMOリサーチ株式会社が開発した「オンライン・リサーチ・コミュニティ・リクルーティング byGMO」で行っているダブルスクリーニングシステムを紹介します。

このダブルスクリーニングシステムでは、GMOリサーチ株式会社が保有する国内ネット調査パネル約184万人を対象に、以下の2段階のスクリーニングを実施します。1つは、MROCの調査対象者としての適性、2つ目は「調査目的と内容」に関する条件を満たすこと。この2つのスクリーニングを経て調査に最適な調査対象者を抽出することで、より多くの消費者インサイトを得られることが期待できます。


<ダブルスクリーニングシステム>
【第1段階】MROCスクリーニング
調査にエントリーしたモニターから、
 1.インターネットでの意見の発信状況
 2.デジタル機器の扱いが得意かどうか
 3.コミュニケーションに関する考え方
という3つの条件でスクリーニングをかけて、MROCに最適な調査対象者を抽出します。

【第2段階】調査案件別スクリーニング
調査テーマの案件ごとに最適だと考えられる調査対象者を、年齢、性別、居住エリア、職業、嗜好、特技などさまざまな条件で抽出します。


■サービスのフロー図

(2)MROCスクリーニング通過者の特徴とは?
こうしたスクリーニングを経て抽出された調査対象者の特徴として、以下のような点が挙げられます。

<MROCスクリーニング通過者の特徴>
 ・主に20~40代の都市部在住の女性が比較的多い。
 ・必ずパソコンを持っている。
 ・ほぼ毎日、ソーシャルメディアを通じて広く情報発信を行っている。
 ・自分の意見は面倒がらずに主張し、不特定多数に自分の言葉でしっかり伝えられる。

MROCの有用性を調べる検証実験を実施

<スクリーナー通過者の書き込み量は圧倒的に多く、MROCに適した意見を表明>
2011年8月に、「オンライン・リサーチ・コミュニティ・リクルーティング byGMO利用グループ」と「通常のリクルーティンググループ」の2グループを選定して、GMOリサーチ株式会社が運営する国内ネット調査パネルinfoQの改善をテーマに、MROC検証実験を5日間実施しました。以下が「定量的検証」「定性的検証」それぞれの結果です。

●定量的検証結果
定量的検証において「オンライン・リサーチ・コミュニティ・リクルーティング byGMO利用グループ」は「通常のリクルーティンググループ」よりも全体書き込み件数で約2倍、書き込み量で約5倍という結果になりました。これらのことから、スクリーナー通過者は“インターネットでの意見の発信状況”で優位性を発揮していることが分かると思います。

●定性的検証結果
下記の表に示した定性的検証結果においても、「通常のリクルーティンググループ」は消極的な意見が比較的多く、意欲的にMROCに参加しているモニターが少ないという結果になりました。それに対して、「オンライン・リサーチ・コミュニティ・リクルーティング byGMO利用グループ」は、“自分の意見を表明できる”“知らない世界への興味”など、MROC にふさわしい積極的な意見が表明され、ディスカッション時の各メンバーの意見の文量が多い等、スクリーニングシステムの有用性を証明することができたのではないかと思います。

まとめ

FacebookやTwitterといったSNSの日本国内の登録者数は1000万人を超えていますが、実際に積極的に活動しているのはその10%程度だと言われています。

MROCのリクルーティングも同様で、インターネット調査に興味があり、調査パネルに参加しているモニター会員は多いのですが、MROCという特殊なオンラインコミュニティの中で、提示されたテーマに対して、面倒がらずに自分の意見をきちんと発言できる調査対象者は、その全員ではありません。

限定された期間内にそういったアクティブな調査対象者を各企業のみで集めることは難しいと感じます。だからこそ、こういったサービスを通じて、活動してくれる調査対象者を確保していくことがMROC自体の国内への普及にも繋がっていくのではないでしょうか。今回紹介したスクリーニングシステムを活用していくことで、今後、さまざまな企業のニーズに対応できるリサーチコミュニティを育てていきたいと考えています。


次回は、MROCの課題と展望について紹介したいと思います。