- OSコマンドインジェクションとはどんなサイバー攻撃のこと?
- 不正なOSコマンドが実行される原因を知りたい
- 被害リスクや効果的な対策方法を教えてほしい
このような疑問がある方もいるでしょう。OSコマンドインジェクションとは、外部からの入力を介して不正にOSのコマンドを実行させるサイバー攻撃のことです。
OSコマンドインジェクション攻撃を受けた場合、機密情報の盗難、データベースの内容変更、ランサムウェアの導入などのリスクが伴います。
攻撃の被害を最小限に抑えるためには、OSコマンドインジェクションが起こる原因を加味した上で、効果的な対策を講じる必要があります。
本記事では、OSコマンドインジェクションの仕組みや起こる原因、被害を防ぐための対策方法を解説します。
目次
[ 開く ]
[ 閉じる ]
- OSコマンドインジェクションとは
- SQLインジェクションとの違い
- OSコマンドインジェクションの仕組み
- OSコマンドインジェクションが起こる原因
- 外部プログラムを呼び出し可能な関数を使用している
- 入力された情報をそのまま受け渡している
- OSコマンドインジェクションによる被害リスク
- OSコマンドインジェクションの被害事例
- 学術情報提供サービスのホームページ改ざん
- ラジオ聴取者の約64万件の個人情報が流出
- 日本テレビの応募者情報43万件が流出
- OSコマンドインジェクションを防ぐための対策
- OSコマンド呼び出しの使用を禁止する
- シェル呼び出し機能のある関数を使用しない
- WAFを導入する
- セキュリティ対策ソフトを利用する
- 定期的に脆弱性診断を実施する
- OSコマンドインジェクションの対策ならGMOサイバーセキュリティ byイエラエ
- まとめ
OSコマンドインジェクションとは
OSコマンドインジェクションとは、外部からの入力を介して不正にOSのコマンドを実行させるサイバー攻撃のことです。
Webアプリケーションの脆弱性を突いた攻撃の1種であり、攻撃を受けるとユーザーが想定していない命令文がシステム上で実行され、深刻なセキュリティ侵害に繋がるリスクがあります。
この攻撃は入力値の中に紛れ込んだ不正なOSコマンドが、Webアプリケーションからシェルに移ることで発生します。
シェルとは、OSの中核であるカーネルとユーザーとの橋渡しをするプログラムのことです。OSコマンドを受け取り、そのコマンドを変換してカーネルに移す役割を果たします。
そのOSコマンドが実行される処理の過程において、ユーザーの入力値がそのまま使用されるシステムが構築されている場合、OSコマンドインジェクション攻撃を受けるリスクが高くなります。
【関連記事】サイバー攻撃とは?種類や被害事例、対策方法についてわかりやすく解説
SQLインジェクションとの違い
SQLインジェクションとは、Webアプリケーションのセキュリティ上の脆弱性を利用し、不正なSQL文を注入してデータベースを不正操作する攻撃のことです。
SQLインジェクションはデータベースへの攻撃に特化しているのに対し、OSコマンドインジェクションはシステムレベルでのコマンド実行を目的としています。
双方の違いは攻撃の影響範囲と目的にあり、OSコマンドインジェクションはシステム全体を危険にさらす可能性があります。
【SQLインジェクションとOSコマンドインジェクションの違い】
- SQLインジェクション:データベースへの攻撃、データの盗難や改ざんが主な目的
- OSコマンドインジェクション:システムへの攻撃、アクセス権の制御が主な目的
OSコマンドインジェクションの仕組み
OSコマンドインジェクションは、Webアプリケーションが外部からの入力をコマンドラインで実行する際、入力値の検証を怠ることで発生します。
攻撃者は不正なコマンドをシステムに注入することで、悪意のある操作を実行することが可能になります。
▼OSコマンドインジェクションが実行される流れ
- 攻撃者がユーザー入力を受け付けるWebアプリーションの部分を見つける
- 悪意のあるOSコマンドを含む攻撃パターンを入力する
- Webアプリケーション内で入力値とともにコマンド文字列が組み立てられる
- 入力を適切に検証せずにOSレベルで実行すると、不正なコマンドを含んだ文字列が生成される
- 不正なコマンド文字列がシェルに移り、解釈され実行される
- 攻撃者の意図したコマンドがシステム上で実行される
この流れにより、システム情報の読み取り、ファイルの変更、さらには不正アクセスのためのバックドアの設置など、攻撃者はさまざまな悪意のある操作が可能になります。
この攻撃は、Webアプリケーションのセキュリティ対策が不十分な場合に発生しやすいのが特徴です。
OSコマンドインジェクションが起こる原因
OSコマンドインジェクションは、攻撃者による不正な入力をそのままOSコマンドとして実行することで発生します。以下、OSコマンドインジェクションが起こる主な原因を紹介します。
- 外部プログラムを呼び出し可能な関数を使用している
- 入力された情報をそのまま受け渡している
各原因の詳細を1つずつ見ていきましょう。
外部プログラムを呼び出し可能な関数を使用している
システムコマンドを実行する際、外部プログラムを呼び出して実行する設計になっていると、攻撃者にOSコマンドインジェクションの入り口を提供してしまいます。
特に以下のような関数を使用している場合は、OSコマンドインジェクション攻撃のリスクが高まります。
▼外部プログラムを呼び出し可能な関数の例
- Perl:open()、system()、eval()
- PHP:exec()、passthru()、shell_exec()
Webアプリケーションを管理する際には、呼び出し機能のある関数の使用には注意が必要です。
主なセキュリティ対策として、入力値の検証や適切なエスケープ処理が求められます。
入力された情報をそのまま受け渡している
ユーザーからの入力をフィルタリングせずに受け渡す状態になっていると、攻撃者からの入力情報がそのままシェルに送られ、不正なOSコマンドが実行されてしまいます。
入力値の検証を怠ることは不正なコマンド実行の危険性を高め、システムのセキュリティリスクに繋がります。
▼OSコマンドインジェクションに悪用される記号文字の例
- |
- <
- >
Webアプリケーションなどでユーザーの入力を受け付ける際には、その入力値を十分に検証し、攻撃パターンが含まれている場合は早急に取り除く必要があります。
OSコマンドインジェクションによる被害リスク
OSコマンドインジェクションにより、システムの完全な制御権を攻撃者に奪われるリスクがあります。
この場合、情報漏洩やデータ破壊、不正アクセスの拡大など、甚大な被害が発生する可能性が高いとされています。
▼OSコマンドインジェクションの主な被害リスク
- 機密情報の盗難
- データベースの内容変更
- ランサムウェアの導入
- マルウェアの感染
- サイバー攻撃の踏み台としての利用
- システム停止による業務の中断
これらの被害は、企業の信用失墜や経済的損失に直結することがあります。
また、システムが攻撃者の踏み台として利用されることで、他の組織への攻撃に関与することになり、法的責任や社会的信用の失墜を招くことも考えられます。
OSコマンドインジェクションの被害事例
OSコマンドインジェクション攻撃による被害は、過去に複数件報告されています。本項では、代表的な被害事例について、以下の3つをそれぞれ解説していきます。
学術情報提供サービスのホームページ改ざん
2021年11月、学術情報流通事業を展開するサンメディアは不正アクセスを受け、ホームページの改ざんがあったことを発表しました。
サイト運営ベンダーが同社ホームページの異常を確認し、その後一次的な原因を特定した上で遮断しています。
原因は「MovableType」の脆弱性を利用したOSコマンドインジェクションによるもので、サイト運営ベンダーが早期の段階でアクセスをブロックしたため、被害は最小限の抑えられました。
ラジオ聴取者の約64万件の個人情報が流出
2016年4月、J-WAVEは同社のサーバーがOSコマンドインジェクション攻撃を受け、ラジオ聴取者の約64万件の個人情報が流出した可能性があると発表しました。
原因は、ブログプログラムのコマンドインジェクション脆弱性を悪用した不正アクセスだと判明しています。
同社は原因となったソフトウェアを削除するとともに、その他のシステムについても安全性を確認し、対策を講じました。
日本テレビの応募者情報43万件が流出
2016年4月、日本テレビは応募フォームなどから投稿された情報約43万件が流出した可能性があると報告しました。
流出した可能性がある約43万件の情報には、氏名・住所・電話番号・メールアドレスなどが含まれます。
ログ解析の結果、原因はソフトウェアの脆弱性を突いたOSコマンドインジェクションだと判明しました。
同社は当該ソフトウェアを削除するとともに、データを安全な保存場所に移動させるなど、新たな情報流出を防ぐための対策を行っています。
OSコマンドインジェクションを防ぐための対策
OSコマンドインジェクションの攻撃を防ぐためには、複数のセキュリティ対策を組み合わせることが重要です。
以下、OSコマンドインジェクションに効果的なセキュリティ対策を5つ紹介します。
- OSコマンド呼び出しの使用を禁止する
- シェル呼び出し機能のある関数を使用しない
- WAFを導入する
- セキュリティ対策ソフトを利用する
- 定期的に脆弱性診断を実施する
これらの方法は、システムに対する不正なアクセスや操作を防ぐための重要な防御策となります。
OSコマンド呼び出しの使用を禁止する
可能な限りOSコマンド呼び出しを避け、アプリケーションレベルでの処理に限定することが推奨されます。
安全なAPIの利用は、システムへの不正なコマンド実行リスクを軽減できる方法の1つです。
特にアプリケーションが直接OSコマンドを実行する必要がない場合、その機能を完全に排除することがセキュリティを高める上で最も効果的です。
この設定を実行すれば、原理的にOSコマンドインジェクションの攻撃を受けるリスクはありません。
シェル呼び出し機能のある関数を使用しない
シェル呼び出しを可能にする関数の使用を避け、代替手段を検討することも効果的な対策です。
シェル呼び出し機能のある関数はOSコマンドインジェクション攻撃に利用されやすいため、セキュリティの観点から使用を控え、プログラムの安全性を向上させることが重要です。
どうしてもOSコマンド呼び出しを行いたい場合は、シェルの呼び出し機能がある関数以外のものを実装するようにしましょう。
これにより、Webアプリケーションの脆弱性を減少させ、セキュリティを強化することができます。
WAFを導入する
WAFの導入は、OSコマンドインジェクションを含む多くのサイバー攻撃から保護する方法です。
WAFとは「Web Application Firewall」の略称で、Webアプリケーションを保護するファイアウォールのことです。
▼WAFの主な機能
- 通信監視・制御機能
- Cookie保護機能
- IPアドレス拒否機能
- ログ・レポート機能
WAFは不正な入力や攻撃試行を遮断し、攻撃パターンを事前に定義することでシステムへの不正アクセスを防ぎます。
このシステムの導入により、悪意のあるリクエストがサーバーに到達する前にフィルタリングされ、Webアプリケーションの安全性が大幅に向上します。
セキュリティ対策ソフトを利用する
セキュリティ対策ソフトを利用することで、システムを不正アクセスから効果的に保護できます。
多くの対策ソフトは、リアルタイム監視により攻撃を早期に検出し、迅速な対処を可能にします。
OSコマンドインジェクションのような複雑な攻撃に対しても防御できる可能性が高く、対策ソフトの導入は包括的なセキュリティ戦略の一環として非常に重要です。
定期的に脆弱性診断を実施する
強固なセキュリティ環境を維持したいなら、定期的に脆弱性診断を実施しましょう。
定期的に脆弱性診断を行うことで、潜在的な脆弱性を早期に発見し修正できます。これにより、外部からの攻撃に対する耐性を高めることが可能です。
脆弱性診断は、診断ベンダーなど第三者に依頼することも視野に入れましょう。
自社で脆弱性診断を実施するよりも、より客観的にセキュリティリスクを評価でき、セキュリティ環境に合った対策を見つけやすくなります。
OSコマンドインジェクションの対策ならGMOサイバーセキュリティ byイエラエ
画像引用元:GMOサイバーセキュリティ byイエラエ
OSコマンドインジェクションの脅威からシステムを守りたいなら、「GMOサイバーセキュリティ byイエラエ」が提供する脆弱性診断やペネトレーションテストを実施することが有効な選択肢となります。
このサービスでは、あらゆるサイバー攻撃の脅威に対して効果的な防御策を提供しており、OSコマンドインジェクションなどに対抗するための脆弱性診断やペネトレーションテストを行っています。
本サービスの強みは、自社のセキュリティリスクを明確に特定し、具体的な対処法まで見つけられる点にあります。
さらに、セキュリティコンサルティングサービスを通じて、最新の脅威に常に対応できる体制を整えることも可能です。
自社のセキュリティ体制を強化し、安全なビジネス運営を実現するためにも、ぜひ本サービスの導入を検討してみてください。
まとめ
本記事では、OSコマンドインジェクションの仕組みや起こる原因、被害を防ぐための対策方法を解説しました。
OSコマンドインジェクションは、Webアプリケーションの脆弱性を突いた攻撃の1種であり、深刻なセキュリティ侵害に繋がるリスクがあります。
Webアプリケーションを安全に運営したい場合、このOSコマンドインジェクションを含めたサイバー攻撃に対する防御策を展開することが不可欠です。
より強固なセキュリティ環境を構築したい方は、「GMOサイバーセキュリティ byイエラエ」へのお問い合わせをご検討ください。
ホワイトハッカーの技術力を駆使して、あらゆるサイバー攻撃に対する防御策を提案いたします。
文責:GMOインターネットグループ株式会社