ユーザーの許可なく秘密裏に情報を収集し、外部に送信する悪意のあるスパイウェア。コンピューターウイルスとは違い、スパイウェアは背後で秘密裏に動作し、ユーザーがその存在に気付かない間に機密情報を盗み出します。
主な感染経路としては、アプリやソフトウェア、メールに記載されたURLや添付ファイル、不審なWebサイトなどが挙げられますが、内部からの犯行によるケースも少なくありません。本記事では、スパイウェアの種類や主な侵入経路、効果的な対策方法について解説します。
目次
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- スパイウェアとは
- コンピューターウイルスとの違い
- スパイウェアの種類
- アドウェア
- キーロガー
- リモートアクセスツール
- ブラウザハイジャッカー
- ジョークプログラム
- スパイウェアの主な侵入経路
- アプリやソフトウェア
- メールに記載されたURLや添付ファイル
- 不審なWebサイト
- 内部犯行
- スパイウェア感染における被害事例
- 不正の振込被害で約400万円の損失
- 不正プログラムによって自治体職員の情報が流出
- 脆弱性を狙うスパイウェア「Pegasus」の発見
- スパイウェアの感染を防ぐための対策
- OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ
- 不審なメールやWebサイトを開かない
- アプリは正規のストア経由でダウンロードする
- 定期的にマルウェアのスキャンを行う
- セキュリティ対策ソフトを導入する
- まとめ
スパイウェアとは
スパイウェアとは、ユーザーの許可なく秘密裏に情報を収集し、外部に送信する悪意のあるマルウェアのことです。このマルウェアは、個人や企業のプライバシーを侵害し、機密情報を不正に取得する目的で設計されています。
具体的には、ユーザーのキー入力やマウス操作を記録したり、ブラウジング履歴を追跡したりすることで、クレジットカード情報やパスワードなどの重要情報を盗み取る攻撃手法です。スパイウェアはウイルス同様に、ユーザーの同意なしにインストールされるため、セキュリティ対策ソフトによる監視や定期的なシステムチェックを行うなど、セキュリティ環境を事前に構築しておく必要があります。
コンピューターウイルスとの違い
スパイウェアとコンピューターウイルスは、いずれも悪意のあるソフトウェアですが、その目的と動作内容には大きな違いがあります。コンピューターウイルスは自己複製を行い、ファイルやシステムに損害を与えることが主な目的です。
これに対し、スパイウェアの主な目的は情報収集です。ウイルスは感染したコンピューターの性能を低下させたり、ファイルを破損させたりすることで、ユーザーに直接的な被害をもたらします。一方、スパイウェアは背後で秘密裏に動作し、ユーザーがその存在に気付かない間に機密情報を盗み出します。
スパイウェアの種類
スパイウェアにはさまざまなタイプがあり、それぞれ異なる方法で情報を盗み取ります。本項では、スパイウェアの主な種類とその特徴について詳しく解説します。
- アドウェア
- キーロガー
- リモートアクセスツール
- ブラウザハイジャッカー
- ジョークプログラム
各種類の詳細を1つずつ見ていきましょう。
アドウェア
アドウェアは、広告表示を目的としたスパイウェアです。ユーザーのブラウジング行動を追跡し、その情報を基に悪意のある広告を大量に表示します。
これらの広告はポップアップやページ内広告の形をとり、フィッシング詐欺に誘導したり、悪意あるソフトウェアをダウンロードさせたりします。
キーロガー
キーロガーは、ユーザーがキーボードで入力した情報を記録し、外部サーバーに送信するスパイウェアです。このタイプのスパイウェアは、特に危険性が高いとされています。
なぜなら、パスワードやクレジットカード情報、個人識別情報など、機密性の高いデータが盗み取られるリスクがあるためです。キーロガーによって収集された情報は、不正アクセスや詐欺行為などに悪用される可能性があります。
リモートアクセスツール
リモートアクセスツールは、遠隔地からコンピューターを操作するために開発されました。本来は遠隔サポートや教育目的など正当な用途で使用されますが、不正アクセスやスパイ行為に悪用されることもあります。
攻撃者はリモートアクセスツールを使用して、ユーザーのコンピューターに侵入し、個人情報を盗み出したりマルウェアを仕込んだりします。
ブラウザハイジャッカー
ブラウザハイジャッカーは、ユーザーのWebブラウザの設定を勝手に変更するスパイウェアです。ホームページや検索エンジンが勝手に変更され、不正なサイトへ誘導されることで、さらなるマルウェア感染やフィッシング詐欺に繋がります。
コンピューター自体のセキュリティレベルも低下するため、感染に気付いた場合は早急な対処が求められます。
ジョークプログラム
ジョークプログラムはユーザーを驚かせる、もしくは迷惑をかける目的で作られたスパイウェアです。他のスパイウェアやウイルスとは違い、破壊活動や情報盗取を行うものではなく、現代では検出されやすいスパイウェアとして知られています。
ただし、ユーザーの混乱や不安を引き起こしたり、コンピューターの動作が遅くなったりするリスクは存在するため、ジョークプログラムへの警戒は必要です。
スパイウェアの主な侵入経路
スパイウェアは多様な方法でコンピューターに侵入し、ユーザーの情報を盗み出します。主な侵入経路として、以下の4つを詳しく解説します。
- アプリやソフトウェア
- メールに記載されたURLや添付ファイル
- 不審なWebサイト
- 内部犯行
これらの侵入経路を理解し、適切な予防措置を講じることが、スパイウェアから企業を守る上で非常に重要です。
アプリやソフトウェア
不正なアプリやソフトウェアのダウンロードは、スパイウェアの侵入経路となり得ます。特に、正規のアプリストア以外からのダウンロードは極力避けるべきです。
不正なアプリやソフトウェアは、有用な機能を提供すると偽装していますが、実際にはスパイウェアやその他のマルウェアを含んでいることがあります。したがって、信頼できる公式のアプリストアを利用し、ユーザーレビューやソフトウェアの評判を確認することが重要です。
メールに記載されたURLや添付ファイル
フィッシングメールに含まれるURLや添付ファイルを開くことにより、スパイウェアに感染するリスクがあります。侵入経路となるメールは、銀行や有名企業、公的機関など、信頼できる組織に見せかけている点が特徴です。
特に不審だと思われるメールのリンクや添付ファイルは開かず、直ちに削除することが求められます。また、メールの差出人が知人であっても、その内容が怪しい場合は確認を取るよう徹底しましょう。
不審なWebサイト
安全でない、または不審なWebサイトを訪れることで、スパイウェアが自動的にダウンロードされるケースがあります。不審なWebサイトには偽の広告やダウンロードリンクが含まれていることが多く、ユーザーがそのリンクをクリックすることでスパイウェアがインストールされる仕組みになっています。
特に偽の広告や警告メッセージが表示された場合は、スパイウェアやマルウェアの可能性が高くなるため、十分な警戒と対処が必要です。
内部犯行
内部犯行により、故意にスパイウェアが導入される場合もあります。攻撃者は他の従業員が気付かない間に、リモートアクセスツールやキーロガーをインストールし、企業の機密情報を盗み出します。
内部犯行を防ぐためには、社内従業員がセキュリティポリシーを理解し遵守するよう徹底し、不正行為を未然に防ぐための予防措置が求められます。
スパイウェア感染における被害事例
過去には、スパイウェア感染による被害事例が複数件報告されています。本項では、代表的なスパイウェア感染の被害事例を3つ紹介します。
不正の振込被害で約400万円の損失
2005年、とある銀行を利用する複数の顧客がスパイウェア感染により、被害総額400万円弱の不正振込の被害を受けました。顧客はメールの添付ファイル経由でスパイウェアに感染し、デバイス内のパスワードや暗証番号が盗み取られ、不正アクセスが行われたとのことです。同行は警察へ被害届を提出し、捜査に全面的に協力しました。
不正プログラムによって自治体職員の情報が流出
2008年、自治体職員の端末にスパイウェアをインストールし、不正プログラムによって所有者の許可なく情報を盗み見るという不正行為が行われました。当該職員がユーザーIDやパスワードを不正に利用し、他の職員のメールを見ていたことも後に判明しています。これは、スパイウェアを用いて内部から犯行を行った代表的な例です。
脆弱性を狙うスパイウェア「Pegasus」の発見
2021年、iOSやAndroid OSを搭載したデバイスの脆弱性を悪用するスパイウェア「Pegasus(ペガサス)」の存在が明らかになりました。このスパイウェアは、モバイル端末に感染させることで、通話やメッセージ、フォト、ビデオ、アプリ利用履歴、所在地などの情報を窃取するものです。
ユーザーに気付かれることなく動作するのが特徴で、攻撃者によって送られたURLをクリックしただけでインストールが開始され、情報盗取のリスクが生じます。この攻撃によって脆弱性を悪用した被害が出たほか、「ゼロクリック攻撃」による被害もiOSのSMSで確認されました。
スパイウェアの感染を防ぐための対策
スパイウェアの感染を防ぐためには、予防措置を講じ、常に警戒心を持つことが大切です。具体的な予防策として、本項では5つの方法を紹介します。
- OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ
- 不審なメールやWebサイトを開かない
- アプリは正規のストア経由でダウンロードする
- 定期的にマルウェアのスキャンを行う
- セキュリティ対策ソフトを導入する
各対策の内容を順番に解説していきます。
OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ
OSや使用するソフトウェアのアップデートは、セキュリティパッチを適用し脆弱性を修正する上で極めて重要です。定期的にシステムの更新を行うことで、スパイウェアを含むさまざまな脅威からシステムを保護できます。
多くのOSやソフトウェアでは、自動更新のプログラムが提供されているため、これを有効にしておけば常に脆弱性の修正を行えます。
不審なメールやWebサイトを開かない
不審なメールやWebサイトの誘導に応じることなく、不要なリスクを避けることも大切です。特に、不明な送信者からのメールに含まれるリンクや添付ファイルは開かず、疑わしいWebサイトへのアクセスも避けるべきです。
常に信頼できる提供者からの情報のみを利用するなど、スパイウェアの侵入経路を減らす工夫が求められます。
アプリは正規のストア経由でダウンロードする
企業で使用するアプリは、公式ストアや信頼できるソースからのみダウンロードするよう徹底しましょう。この習慣を身につけることで、不正なアプリによるスパイウェア感染のリスクを大幅に減らせます。
▼信頼できる正規のアプリストア
- App Store
- Google Play
非公式サイトや第三者から配布されるアプリには、スパイウェアやその他のマルウェアが潜んでいるリスクが高くなります。仮にアプリをインストールする必要がある場合でも、開発者の信頼性やアプリのレビューを確認することが重要です。
定期的にマルウェアのスキャンを行う
定期的にマルウェアのスキャンを行うことは、スパイウェアを含むマルウェアの感染を早期に発見し、対処するために不可欠です。多くのソフトウェアでは、スケジュール設定による自動スキャン機能が提供されているため、セキュリティチェックの手間を減らすためにも、この機能を積極的に活用しましょう。
ただし、マルウェアに感染していると疑われる場合や、コンピューターの動作が遅くなったり不審な動作をしたりする場合には、直ちにフルスキャンを実行することが推奨されます。
セキュリティ対策ソフトを導入する
信頼できるセキュリティ対策ソフトを導入することで、リアルタイムでの保護を実現し、スパイウェアをはじめとするマルウェアからの保護が可能となります。対策ソフトの多くは不正なシステムを検出し、スパイウェアの侵入を阻止する機能を持っています。
また、不正なWebサイトへのアクセスをブロックしたり、ダウンロードされたファイルを自動的にスキャンしたりすることで、感染のリスクを一層低減させます。対策ソフトを選択する際には、更新頻度やユーザーレビュー、対応範囲を確認するようにしましょう。
まとめ
本記事では、スパイウェアの種類や主な侵入経路、効果的な対策方法について解説しました。
スパイウェアは個人や企業のプライバシーを侵害し、機密情報を不正に取得する目的で設計されています。主な種類としては、アドウェア、キーロガー、リモートアクセスツールなどが挙げられ、それぞれ特徴や被害リスクが異なります。
被害を受けないようにこの記事を参考にセキュリティ対策を実施するようにしましょう。
文責:GMOインターネットグループ株式会社