「OSINTとはどんな手法?」「OSINTを活用する際の注意点は?」といった疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。
OSINTとは、公開情報を収集・分析することで、特定の目的に沿った調査を行う手法のことです。
近年、サイバーセキュリティの分野でも注目を集めており、セキュリティ上の脅威の早期発見や、攻撃者の動向把握に活用されています。
一方で、OSINTはサイバー攻撃に悪用されるリスクもあるため、適切な情報管理と倫理的・法的な配慮が不可欠です。
この記事では、OSINTの概要や活用方法、注意点、活用するまでの手順について解説します。
目次
[ 開く ]
[ 閉じる ]
OSINTとは
OSINTとは、「Open Source Intelligence」の略称で、一般に公開されている情報を収集・分析し、その結果を活用する手法のことです。
米国国防総省(DoD)では、「特定の情報要件に対処する目的で、一般に入手可能な情報を収集し、利用し、適切な対象者に適時に普及させた情報」と定義されています。
この用語は元々、国家安全保障に関する軍事・諜報活動として用いられてきました。
戦後の諜報活動は、HUMINT(人間を媒介とした諜報)やSIGINT(通信や電磁波を利用した諜報)などの手法が活用されていましたが、1980年代から諜報活動が徐々にOSINTに置き換わりました。
OSINTは情報収集の手段として古くから活用されてきましたが、近年ではサイバーセキュリティの分野でも注目を集めています。
公開情報を効果的に活用することで、セキュリティ上の脅威を早期に発見したり、攻撃者の動向を把握したりすることが可能となるのです。
OSINTで収集する主な公開情報
OSINTで収集する主な公開情報としては、以下のようなものが挙げられます。
▼OSINTで収集する主な公開情報
- 書籍や新聞、雑誌などの印刷物
- ニュースサイトやブログ、掲示板などのWebサイト
- Twitter、FacebookなどのSNS
- 企業のプレスリリースや財務報告書
- 特許や商標、ドメイン情報などの公的記録
場合によっては、ダークウェブを活用してOSINTの収集を進めることもあります。
これらの情報を収集・分析することで、調査対象に関する詳細な情報を得ることができるのです。
OSINTは、情報収集の手段として非常に幅広い応用が可能であり、ビジネスからセキュリティまで、さまざまな分野で活用されています。
サイバー攻撃としてのOSINT
OSINTは、サイバー攻撃の手法として悪用される可能性があります。
攻撃者が公開情報を収集・分析することで、標的組織の弱点を探り、攻撃を仕掛けるケースが存在するのです。
例えば、OSINTによって収集された組織情報が、標的型攻撃やソーシャルエンジニアリングに悪用されるリスクがあります。
従業員の個人情報や組織の内部情報が漏洩していた場合、それらが攻撃者に悪用される危険性が高まります。
【関連記事】サイバー攻撃とは?種類や被害事例、対策方法についてわかりやすく解説
▼サイバー攻撃として利用されやすい一般情報
- 企業のWebサイトに掲載されている組織情報
- SNS上で公開されている従業員の個人情報
- 設計ミスやトラブルによって外部に公開されている機密情報
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が公開した「情報セキュリティ10大脅威 2024」では、組織向けの10大セキュリティ脅威として、「標的型攻撃による機密情報の窃取」が第4位にランクインしています。
「標的型攻撃による機密情報の窃取」が9年連続でランクインしていることからも、OSINTを用いたサイバー攻撃が重大な脅威であることがわかります。
このように、OSINTがサイバー攻撃の一環として利用される点には注意が必要です。サイバー攻撃の種類と手口については、以下の記事で詳しく解説しています。
セキュリティ対策としてのOSINT
OSINTは自社の情報資産を守るためのセキュリティ対策としても活用されます。
公開情報から自社の脆弱性や攻撃の兆候を早期に発見し、その弱点を克服するための効果的な対策を講じることが可能です。
具体的には、自社の機密情報が意図せず公開されていないか、従業員のSNSアカウントから不適切な情報が漏洩していないかなどを確認できます。
また、競合他社の動向を把握することで、自社のセキュリティ戦略の立案にも役立ちます。
▼セキュリティ対策として役立つ一般情報
- 自社のWebサイトや公開資料に掲載されている機密情報
- 従業員のSNSアカウントから投稿される不適切な内容
- 検索エンジンから検索可能な、意図せず公開されたディレクトリやファイルの存在
- 公開ファイルの文書に含まれる作成者名やメールアドレスなどの情報
OSINTを活用したセキュリティ対策は、サイバー攻撃の予防と早期発見に大きく貢献します。
ただし、OSINTを用いた適切な対策には、専門的な知識とスキルが不可欠です。そのため、信頼できるセキュリティベンダーと連携し、効果的なOSINT活動を展開することが求められます。
OSINTを活用する際の注意点
OSINTを活用する際は、適切な情報管理と倫理的・法的な配慮が必要です。
ここでは、OSINTを効果的かつ適切に活用するための注意点について解説します。
情報の更新と管理を怠らない
OSINTで収集した情報は定期的に更新し、常に最新の状態を維持することが求められます。
なぜなら、OSINTで収集した情報は時間経過とともに陳腐化する恐れがあるためです。
公開されている一般情報は基本的に過去のものであり、情報は常に更新されているため、収集した情報は定期的に更新する必要があります。
class="font-bold">情報の管理体制を整備し、適切なアクセス制御やバックアップを行うことで、情報の保全と活用を両立できます。
また、情報の更新頻度や保存期間などのルールを明確にしておくことも大切です。
情報の信頼性を確認する
OSINTを活用する際は、情報の信頼性を必ず確認しましょう。
一般に公開されている情報は内容が正確であるとは限らないため、誤りや偽情報が含まれる可能性を念頭に置く必要があります。
収集した情報の信頼性を確認する習慣をつけ、複数の情報源から裏付けを取ることが重要です。
情報の出所や作成者の信頼性を評価したり、他の情報と照らし合わせたりすることで、情報の正確性を高められます。
特に重要な意思決定に活用する情報については、入念な検証が不可欠といえるでしょう。
プライバシーの保護や法律の準拠を確認する
OSINTで収集する情報には、個人情報や機密情報が含まれる場合があります。
プライバシーの保護に十分配慮し、関連する法律や規制を遵守することが必要です。
特に、従業員を含めた個人情報の取り扱いについては、プライバシーの観点から慎重な対応が求められます。
個人情報を許可なく活用した場合、法的なトラブルに発展するリスクもあるため、倫理的な情報収集を心がけましょう。
OSINTを活用するまでの手順
OSINTを効果的に活用するには、計画から共有までを体系的に行うことが大切です。
以下、OSINTを活用するまでの一連の手順について解説します。
計画
OSINTを実施する際は、まず情報収集の目的や範囲、手法などを明確化する必要があります。
そして、必要なリソースや体制を整備し、現実的な実行計画を策定します。
この計画段階での意思決定が、その後のOSINT活動の成否を大きく左右するため、関係者の合意形成と適切なリソース配分が欠かせません。
情報収集
策定した計画に基づいて、公開情報を幅広く収集していきます。
効率的な収集のために、適切なツールや情報源を選定することが重要です。
例えば、信頼性の高いSNSアカウント、専門のセキュリティブログ、ニュースサイト、公的なデータベースなどが該当します。
情報の信頼性や網羅性にも配慮しながら、目的に沿った情報を漏れなく収集することを心がけましょう。
処理
収集した情報を整理し、分析に適した形式に加工する段階です。
収集した情報は非常に量が多く、非構造化データであるため、ノイズの除去や情報の分類・統合などを行い、分析しやすいデータセットを作成する必要があります。
この段階での工夫が、その後の分析の精度や効率に大きな影響を与えます。
分析
処理した情報を分析して、目的に沿った知見を得ていきます。
具体的には、パターンの発見や異常の検知、関連性の把握などを通じて、有用な情報を抽出します。
分析手法の選択や結果の解釈には高度な専門性が求められるため、必要に応じて、専門家の支援を得ることも検討しましょう。
分析の結果は、意思決定や問題解決に直結する重要な情報となります。
共有
分析で得られた知見は、関係者に適切に共有することが重要です。
レポートの作成やプレゼンテーションによる情報共有を行い、IT部門や経営陣などの組織内で情報活用を促進します。
また、必要に応じて同業者や政府機関への共有も検討しましょう。
共有の際は、情報の機密性や受け手のニーズに配慮し、わかりやすく伝えることが求められます。
OSINTやペネトレーションテストのご依頼ならGMOサイバーセキュリティ byイエラエ
画像引用元:GMOサイバーセキュリティ byイエラエ
「GMOサイバーセキュリティ byイエラエ」は、企業様の脆弱性診断やペネトレーションテストをサポートしています。
7,500件を超える豊富な診断実績を有しており、国内トップクラスのホワイトハッカーが在籍している点が特徴です。
これまでの知見を活かし、お客様のサービスやご予算、状況に合わせて最適な診断プランをご提案いたします。
セキュリティ対策の強化を考えている企業様は、ぜひ当社の脆弱性診断・ペネトレーションテストをご検討ください。
まとめ
この記事では、OSINTの概要や活用方法、注意点、活用するまでの手順について解説しました。
OSINTは、公開情報を戦略的に活用することで、セキュリティ対策の強化やリスク管理の向上に大きく貢献します。
ただし、その実施には適切な情報管理と倫理的・法的な配慮が欠かせません。
また、高度な専門性が求められるため、経験豊富なセキュリティベンダーとの連携が求められます。
OSINTを通じたセキュリティ強化を考えているなら、「GMOサイバーセキュリティ byイエラエ」のサービス利用をご検討ください。
国内トップクラスのホワイトハッカーが、脆弱性の診断から対策方法までを全面的にサポートいたします。
文責:GMOインターネットグループ株式会社