近年、サイバー攻撃の脅威が増加傾向にあることから、企業のセキュリティ対策が不可欠になっています。そんな状況に対応するため、セキュリティ人材を確保した高度な環境構築が求められています。
セキュリティ人材とは、情報セキュリティの専門知識や技能を持つ人材のことです。企業や組織のセキュリティを守る重要な役割を担いますが、人材の需要が拡大している背景から、多くの企業では人材不足に陥っています。
そこで今回は、セキュリティ人材が不足する原因や必要なスキル、人材を確保する方法について解説します。セキュリティ人材の概要を深く理解したい方や、人材確保や教育を積極的に進めたい方は本記事を最後までご覧ください。
目次
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セキュリティ人材とは
セキュリティ人材とは、情報セキュリティの専門知識や技能を持つ人材のことです。これらの人材は、企業や組織のセキュリティを守る重要な役割を担います。
セキュリティ人材には最新技術やシステムの活用スキル、セキュリティ対策の戦略立案スキルなど、高度な技術・スキルが求められる点が特徴です。組織にとって脅威となるサイバー攻撃が蔓延している現代では、高度なセキュリティ環境を構築できるセキュリティ人材が不可欠です。
情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き」でも、セキュリティ人材の重要性を強調しています。
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セキュリティ人材が必要とされる理由
サイバー攻撃の高度化に伴い、専門的なセキュリティ知識が必要とされるようになりました。さまざまなサイバー攻撃から企業を守ることで、経済損失を防ぎ、企業の信頼性を保つことにも寄与します。セキュリティ人材が必要とされる具体的な理由は以下の通りです。
▼セキュリティ人材が必要とされる主な理由
- サイバー攻撃から企業の情報資産を守るため
- ビジネスの継続性を確保し、経済的損失を防ぐため
- 企業の信頼性と安全性を保持するため
- 法規制やコンプライアンスへの対応が求められるため
セキュリティ人材は企業のサイバーセキュリティを守るために不可欠であり、その重要性は今後も増していくと考えられます。企業はセキュリティ人材の育成や確保に努めることが、長期的な経営戦略として非常に重要です。
企業のセキュリティ人材が不足している原因
セキュリティ人材の不足は多くの企業が直面する課題の1つです。この不足の原因を探ることで、解決策を見つける手掛かりになります。
非営利組織のISC2が発表したグローバルセキュリティ人材調査「ISC2 Cybersecurity Workforce Study」の2023年版によると、日本のセキュリティ人材は需要と供給を比較した場合、約11万人不足しているとのことです。
セキュリティ人材の充足度では、「大幅に不足」が32%、「やや不足」が48%、「十分にいる」が18%、「余剰がある」が2%という結果が出ています。人材不足がもたらす影響では、以下のような問題が挙げられています。
▼人材不足が与える主な影響
- セキュリティチームメンバーを十分にトレーニングする時間がない(46%)
- 適切なリスク評価・管理を実施するための十分な時間がない(44%)
- セキュリティ要員を十分にトレーニングするためのリソースが不足している(37%)
- 適切なプロセスと手順の看過がある(36%)
- 不完全なインシデント対応が発生している(29%)
- 重要システムへのパッチ適用の遅れが発生している(29%)
- インシデント対応の遅延が発生している(29%)
- システムの設定ミスが発生している(26%)
- ネットワークに対する全ての脅威を把握することが不可能になっている(25%)
- 直面するリスクを上司に報告するためのリソースが不足している(24%)
- サードパーティーへの過度な依存が発生している(24%)
人材不足が発生している主な原因としては、「給与が安い」が39%、「有能な人がいない」が38%、「セキュリティ担当以外のIT人材のトレーニングが十分にできていない」が34%、「成長や昇進の機会が与えられない」が32%という結果でした。
ISC2が発表したこのような原因の中で、特に大きいとされる原因は以下の3つです。それぞれの原因を詳しく解説していきます。
人材育成のハードルが高い
セキュリティ人材には専門の知識や経験が求められるため、育成には時間とコストがかかり、一般的に人材育成のハードルが高いとされています。また、技術の進歩が早く、常に最新の知識を習得する必要がある点も人材不足の原因に寄与しています。
特に中小企業は人材育成に時間を割くことが難しく、一部の大企業を除いては十分にリソースを投入できていないのが現状です。
雇用のコストが高い
セキュリティ人材を雇用するコストは比較的高い傾向にあります。専門家の不足による需要の高さが、コストを押し上げる要因になっているのです。
セキュリティ対策や人材にかけられる予算が限られている中で、企業はコスト対効果を考慮しながら適切な人材を確保する必要があります。ヘッドハンティングなどで外部から人材を確保する場合は、より高いコストが求められます。
人材確保に取り組んでいない
セキュリティ対策の重要性を認識していても、積極的な人材確保に取り組んでいない企業が多く存在します。リソースの不足や戦略的な取り組みの欠如が、この問題をさらに深刻化させているのです。
企業はセキュリティ人材の確保と育成を経営戦略の一環として位置づけ、積極的に取り組むことが推奨されます。
セキュリティ人材に求められるスキル
セキュリティ人材には特定のスキルセットが求められます。現代のビジネス環境では、サイバー攻撃の脅威が日々進化しており、それに対応するための高度な知識と技術が不可欠です。以下、セキュリティ人材に必要なスキルを紹介します。
- 最新技術・システムの活用能力
- セキュリティリスクの認識能力
- セキュリティ対策の戦略立案スキル
各スキルの詳細を1つずつ見ていきましょう。
最新技術・システムの活用能力
常に最新のセキュリティ技術やシステムに精通し、これらを活用する能力が求められます。新しいセキュリティの脅威に対応するためには、最新の技術トレンドを把握した上で、適切なツールやソリューションを選定・適用することが重要です。
また、これらの技術を組織内で協力して運用するための社交性や積極性も求められます。コミュニケーション能力が高く、技術や活用能力のある人材が特に重宝されます。
セキュリティリスクの認識能力
優秀なセキュリティ人材には、セキュリティリスクの認識能力が不可欠です。潜在的なセキュリティリスクを正確に認識し、それに対応するための分析力が求められます。
この能力は、インシデント発生時の迅速な対応だけでなく、事前のリスク評価や予防策の策定にも大きく寄与します。
セキュリティ対策の戦略立案スキル
セキュリティ脅威に対抗するための効果的な防御戦略の企画と実行能力が必要です。このスキルには、以下のような広範囲にわたる業務が含まれます。
▼戦略立案スキルの一例
- セキュリティポリシーの策定
- 運用プロセスの改善
- チームや組織全体のセキュリティ意識の向上
また、組織のセキュリティポリシーに沿った運用や、定期的なレビューと改善を行うスキルもセキュリティ人材に求められます。
セキュリティ人材を確保する方法
セキュリティ人材の確保は、企業のセキュリティ体制を強化するための重要なステップです。セキュリティ人材の確保にはさまざまなアプローチがあり、その中から自社の状況に合った方法を選択することが大切です。
- 他社からヘッドハンティングする
- 業務委託を活用する
- 社内で一から育成する
セキュリティ人材を確保するための方法を詳しく見ていきましょう。
他社からヘッドハンティングする
経験豊富なセキュリティ専門家を他社から直接スカウトする手があります。高い専門スキルを持つ人材の確保には、特にヘッドハンティングが効果的です。
セキュリティ人材が不足している現状、求人をアピールしても理想の人材が応募してくるとは限りません。他社から能力の高い人材にアプローチをかけることで、即戦力となる専門家を早急に獲得できます。
ただし、デメリットとしてはコストが高くなる点が挙げられます。人材採用の予算を考慮し、ヘッドハンティングの利用を検討しましょう。
業務委託を活用する
セキュリティ業務の一部を外部企業に委託し、専門知識を活用する方法もあります。専門企業との協力により、高度なセキュリティ対策を実現できることがメリットです。
正社員にこだわらず、セキュリティ人材を業務委託で一時的に確保すれば、少ないコストで短期的に成果を得られます。これは、特にリソースや専門知識が不足している場合に有効な方法です。
社内で一から育成する
社内研修や育成プログラムを通じて、自社のセキュリティ人材を育てる方法も1つの手です。これにより、企業独自のニーズに合わせた専門家を育成することができます。
しかし、育成完了までに時間がかかるため、短期的なニーズには応えにくいことが難点となります。社内で人材を育成する際は、長期的な視点を持って取り組むことが重要です。
セキュリティ人材の育成方法
セキュリティ人材を育成するためには戦略的なアプローチが必要です。継続的な教育とトレーニングを通じて、専門知識と技能を向上させることが重要となります。具体的な育成方法について、以下の3つをそれぞれ解説します。
人材育成制度を確立する
まずは社内にセキュリティ専門の教育プログラムや育成制度を確立することが大切です。制度を確立することにより、従業員に継続的に学習できる環境を提供でき、セキュリティスキルの向上に期待できます。
人材育成の取り組み例として、IPAの「ITのスキル指標を活用した情報セキュリティ人材育成ガイド~情報セキュリティ上の脅威から企業を護るために~」では、「情報セキュリティに関する専任組織を設置したほか、各組織にも情報セキュリティ担当者を置いたことで、セキュリティに対する意識が全社的に向上した」という現場の声が紹介されています。
自社研修・教育を定期的に行う
社内で定期的にセキュリティ関連の研修や教育プログラムを実施することも、人材育成の重要な要素です。主な研修・教育の内容としては、以下のようなものが挙げられます。
▼自社研修・教育の一例
- 教育プログラムや試験・資格の活用
- ネットワークフォレンジックが体験できる訓練
- セキュリティインシデントの模擬訓練
最新のセキュリティトレンドや技術に関する知識を共有し、従業員のスキルを高めることができます。研修には理論だけでなく実践的な演習も取り入れ、実務で直面する問題への対応能力を高めることが重要です。
外部研修を活用する
外部の専門機関や研修プログラムの活用も検討しましょう。外部の研修に参加してもらうことで、業界の標準や新しい技術に触れる機会を提供できます。
社内では得られない貴重な知見や視点をもたらし、従業員のセキュリティ意識のさらなる向上が図れます。外部研修は基本的にカリキュラムが公開されており、レベル別に講習が区分されているため、従業員の知識レベルに合わせて選択するようにしましょう。
まとめ
本記事では、セキュリティ人材が不足する原因や必要なスキル、人材を確保する方法について解説しました。
セキュリティ人材の不足は多くの企業が直面する課題であり、ヘッドハンティングや業務委託の活用などで、その解決策を探ることが重要です。セキュリティ人材を社内で育成する際は、継続的な教育とトレーニングを実施することが知識と技能を向上させる鍵となります。
また、どうしても人材が確保できない場合はセキュリティ対策ソフトに頼るのも1つの手です。人材を確保するよりもコストが低く、自社で対策を行うよりも高い効果に期待できます。人材確保と全く同じ効果が見込めるわけではありませんが、「セキュリティ対策を強化する」という点においては有効な手段と言えるでしょう。
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