「ダークウェブではどんなコンテンツが取引されているの?」「ダークウェブのリスク・危険性が知りたい」という疑問を持つ方もいるでしょう。ダークウェブとは、一般の検索エンジンではアクセスできないインターネットの隠された部分のことです。
ダークウェブでは違法性の高いものが取引されており、犯罪被害に遭う、犯罪に加担する、マルウェアやウイルスに感染するなど、さまざまなリスク・危険性が伴います。本記事では、ダークウェブの概要や誕生した背景、取引されているコンテンツ、リスク・危険性について詳しく解説します。
目次
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ダークウェブとは
ダークウェブとは、一般の検索エンジンではアクセスできない、インターネットの隠された部分のことを指します。匿名性の高いネットワーク上に構築されているウェブサイトなどがこれに該当し、アクセスするためには特定のソフトウェアや特別な設定が必要です。
ダークウェブの特徴としては、違法取引や犯罪活動の温床になりやすいことが挙げられます。例えば、ダークウェブでは違法な薬物や武器の販売、個人情報の流通など、非合法な取引が頻繁に行われています。匿名性の高さが、さまざまなリスクや危険性を生み出す原因になっているのです。
ネットワーク上にはダークウェブのほかに、「サーフェイスウェブ」と「ディープウェブ」の2種類が存在します。ダークウェブをより深く知るためには、これらのウェブの理解が求められます。
サーフェイスウェブ
サーフェイスウェブ(表層ウェブ)とは、一般的にアクセス可能なウェブのことを指します。具体的には、GoogleやYahoo!などの通常の検索エンジンで検索できる範囲内のウェブが該当します。
公開情報が集まる領域であり、インターネットの大部分を占めていることが特徴です。一般的な企業のウェブサイトやニュース記事、ブログなどがサーフェイスウェブに含まれます。
ディープウェブ
ディープウェブ(深層ウェブ)とは、検索エンジンでインデックスされていないウェブのことを指します。一般的なウェブブラウザから閲覧することはできますが、GoogleやYahoo!などの検索エンジンからは見つけることができません。
この領域には、非公開のデータベースや個人アカウント内の情報が含まれています。例えば、オンラインバンキングの口座情報や研究機関の内部資料、有料のコンテンツサービスなどがこれに該当します。
ディープウェブ自体は合法的な用途で多く利用されており、閲覧のためには原則として専用のソフトウェアを必要としません。
ダークウェブが誕生した背景
ダークウェブは、インターネットの匿名性とプライバシー保護の目的から発展しました。この背景には、ユーザーの匿名性を保ちつつ安全なコミュニケーションを可能にする技術的なニーズが存在しています。
ダークウェブの元になった技術は、なんと米国海軍によって開発されたものです。情報通信の匿名性を確保するため、「オニオン・ルーティング」という技術が考案されました。
- ▼オニオン・ルーティングとは
- 匿名通信技術を適用することで、インターネット通信の追跡を困難にする技術のこと。玉ねぎ(オニオン)のように何層ものレイヤーによって暗号化と復号が行われるため、オニオン・ルーティングという名称で呼ばれるようになった。
オニオン・ルーティングはその後、「Tor(トーア)」という名称に変化し、非営利団体のプロジェクトとして引き継がれました。この技術はウェブの閲覧に制限がある国で利用されるようになり、次第にダークウェブとして世界中に普及していったのです。
日本では2012年に発生した「パソコン遠隔操作事件」がきっかけで、Torの存在が世間的に広く知られるようになりました。
ダークウェブで取引されている主なコンテンツ
ダークウェブでは、さまざまな違法コンテンツが取引されています。これらのコンテンツの中には、違法薬物や武器などの危険物から、個人情報やデジタルデータまで多岐にわたります。以下、代表的なコンテンツをそれぞれ解説していきます。
- ウェブサイトのログイン情報
- 住所や氏名などの個人情報
- 偽造クレジットカードやクレジットカード情報
- マルウェアを作成するためのツール
- 不正なアクティベーションコード
- 麻薬や児童ポルノなどの違法なもの
取引されるコンテンツの種類とそのリスクを認知することで、ダークウェブの実態とその危険性を深く理解することができます。
ウェブサイトのログイン情報
ダークウェブでは、ウェブサイトのログイン情報が頻繁に取引されます。ログイン情報には、不正に入手したユーザー名やパスワードなどが含まれます。
これらの情報を利用してさらなる不正アクセスや詐欺が行われる可能性が高く、例えば不正ログインによる個人情報の窃取や、オンラインショッピングサイトでの詐欺行為などが考えられます。
住所や氏名などの個人情報
ダークウェブでの取引には、個人の住所や氏名などの情報も含まれます。これらの情報が不正に取引されることで、個人の安全やプライバシーが大きく脅かされます。
▼セットで取引されやすい個人情報
- 住所
- 氏名
- 電話番号
- メールアドレス
個人情報の漏洩によって生じるリスクは非常に大きく、詐欺や窃盗などの犯罪に利用される恐れがあります。また、住所情報が悪用される場合、物理的な盗難やストーカー行為に繋がる危険性が伴います。
偽造クレジットカードやクレジットカード情報
ハッキングなどで盗まれたクレジットカード情報や、偽造クレジットカードが取引されるケースもあります。クレジットカード情報はECサイトでのショッピングや金融詐欺のために使用され、偽造クレジットカードは実店舗での不正購入で主に悪用されます。これらの情報を使った悪用行為は、被害者に金銭的被害を与える危険性があります。
マルウェアを作成するためのツール
マルウェアの作成や拡散に使用するためのツールもダークウェブで取引されています。これらのツールは、サイバー攻撃者が簡単にマルウェアを作成し、広範囲に拡散するために使用されます。
実際、ランサムウェアの被害が増加した原因の1つは、ダークウェブでの取引が増加したためです。このようなツールの流通は、ランサムウェアやトロイの木馬などの危険なマルウェアが生み出され、企業や個人に甚大な被害を与える可能性があります。
不正なアクティベーションコード
ソフトウェアやゲームの不正なアクティベーションコードも流通しています。正規の販売ルートを経由せずに取得されたものであり、著作権侵害やライセンス違反に関与するリスクを孕んでいます。
これらの不正なコードは、ソフトウェア開発者やゲームメーカーの収益を損なうだけでなく、最終的には消費者の信頼をも損ねることに繋がります。また、不正なコードを使用することで、ユーザー自身が法的な問題に巻き込まれる可能性も否定できません。
麻薬や児童ポルノなどの違法なもの
ダークウェブでは、麻薬や児童ポルノなどの違法性の高いものが取引されているケースもあります。国によって違法になるものや偽造パスポート、拳銃などのほか、犯罪を直接依頼する場合もあるなど、法律に触れるものが多く出回っています。これらの取引は違法性が非常に高いため、関与した時点で犯罪として捉えられる可能性があります。
ダークウェブを利用するリスク・危険性
ダークウェブを利用することには多大なリスクが伴います。その匿名性の高さから多くの危険が潜んでいるため、興味本位でダークウェブを利用することはおすすめしません。以下、ダークウェブを利用する主なリスク・危険性を紹介します。
- 犯罪被害に遭う
- 犯罪に加担する
- マルウェアやウイルスに感染する
- 法執行機関に起訴される
それぞれのリスク・危険性を詳しく見ていきましょう。
犯罪被害に遭う
ダークウェブを利用すると、犯罪被害に遭うリスクがあるため注意が必要です。例えば、偽造された商品を購入したり、悪意のある取引によって個人情報が漏洩したりすることがあります。
また、知らない間にマルウェアに感染し、金銭的被害に遭う可能性も考えられます。詐欺師による偽のサービスや商品が頻繁に取引されているため、ダークウェブの利用時には常に高い警戒心を持つことが大切です。
犯罪に加担する
ダークウェブでの活動は、意図せずに犯罪に加担することになり得ます。違法なコンテンツやサービスに関わることで、その気がなくても誰かに迷惑を与えてしまうリスクが伴います。
また、ダークウェブを利用中に自分の個人情報が流出し、悪意のある第三者によるなりすましによって家族や友人に被害が及ぶ可能性も考えられます。
マルウェアやウイルスに感染する
ダークウェブを利用することで、マルウェアやウイルスに感染する危険性が増します。利用者のデバイスがこれらに感染すると、以下のようなリスクを招く恐れがあります。
▼マルウェアやウイルスに感染する主なリスク
- 個人情報の漏洩
- デバイス・データの破損
- ランサムウェアによる身代金要求
マルウェアやウイルスへの感染は、さまざまなセキュリティリスクの原因となり得ます。ダークウェブへアクセスすること自体が大きなリスクと言えるでしょう。
法執行機関に起訴される
ダークウェブでの違法行為は法執行機関による捜査の対象となり、起訴されるリスクが伴います。特に薬物取引や児童ポルノの流通、武器の売買などの重大犯罪に関与すると、国際的な法執行機関による捜査が行われ、本人にその気がなくても逮捕される場合があります。
法執行機関はダークウェブを頻繁に監視・巡回しており、犯罪に加担しそうな要注意人物は起訴される可能性が高まります。個人の将来に大きな影響を及ぼすことになるため、軽い気持ちでダークウェブを利用するのは絶対にやめましょう。
ダークウェブの悪用による被害事例
ダークウェブによる被害事例は過去に複数件報告されています。特に有名な被害事例について、以下の3つをそれぞれ紹介します。
個人情報やログイン情報の公開
2020年12月、日本国内で607の企業や行政機関がサイバー攻撃を受け、世界で5万台以上の脆弱性を抱えた機器の情報がダークウェブ上に公開されました。個人情報やログイン情報が含まれていたことから、国内・国外で大きな混乱を引き起こしました。
ターゲットとなった機器は、外部からネットワーク内部に安全に接続するための「VPN」と呼ばれるものです。新型コロナウイルス感染症が流行した影響で、当時はVPNの利用者が増加傾向にありました。
コロナワクチンの偽物販売
2021年、新型コロナウイルス感染症の流行に便乗し、ダークウェブで新型コロナワクチンの偽物販売が行われました。警察当局は「ワクチン接種が日本でも始まり順番待ちになると、一般的なウェブでも出回る可能性がある」と注意喚起しています。
同年の1月下旬〜2月上旬に特別なソフトウェアでダークウェブにアクセスしたところ、「COVID-19 VACCINE」という名称で販売を行うサイトが複数見つかりました。中国科学院武漢ウイルス研究所の科学者を名乗るグループのサイトもあり、約7,000円相当の暗号通貨での支払いを求めていたとのことです。
児童ポルノサイトの運営
ダークウェブにて世界最大級の児童ポルノサイトを運営し、2015年からの3年間で4億円以上を稼いだ事件が発生しました。サーフェスウェブから締め出されたことをきっかけに、ダークウェブで児童ポルノサイトの運営が横行しました。
人気の児童ポルノサイトは複数の言語に対応し、アクセスは年間数千万件に及んだとのことです。2018年には運営者が逮捕され、実刑付きの判決が出たことでサイトは閉鎖しました。
ダークウェブ利用に関するセキュリティ対策
ダークウェブを利用するだけでは違法ではありませんが、さまざまなリスクや危険性が伴います。これには、個人情報の漏洩やマルウェアの感染、犯罪被害などが含まれます。
ダークウェブを利用する際のリスク、もしくは誤って利用した際の被害を減らすためには、高度なセキュリティ対策が必要です。特に、個人のデータ保護やデバイスのセキュリティを確保することが大切です。
▼具体的なセキュリティ対策
- 興味本位でアクセスしない
- 個人情報の管理を徹底する
- OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ
- ファイアウォールを有効にする
- セキュリティ対策ソフトを導入する
ダークウェブの利用は規制されていないため、何が起こるか分からず、常に危険と隣り合わせと言えます。特別な理由がない限りは利用を避け、GoogleやYahoo!などの通常の検索エンジンでアクセスできるサーフェイスウェブを利用しましょう。
まとめ
本記事では、ダークウェブの概要や誕生した背景、取引されているコンテンツ、リスク・危険性について解説しました。
インターネットの隠された部分であるダークウェブは、匿名性とプライバシー保護の目的から発展しました。ダークウェブでは、ウェブサイトのログイン情報、住所や氏名などの個人情報、麻薬や児童ポルノなど、違法性の高いものが主に取引されています。
ダークウェブの利用に関するセキュリティ対策を講じることも重要ですが、何よりも誤って利用しないよう注意することが大切です。興味本位での利用は避け、安全なサーフェイスウェブを利用するようにしましょう。
文責:GMOインターネットグループ株式会社