WordPressのセキュリティ対策を行わない場合、不正アクセスや情報漏洩など、さまざまな被害を受けるリスクがあります。Webサイトの信頼性や機密情報を保護したいなら、以下のようなセキュリティ対策を講じることが大切です。
▼WordPressのWebサイト運用で大切な5つのセキュリティ対策
- ログインパスワードの強化
- テーマやプラグインの最適化
- 定期的なバックアップ取得
- セキュリティ用のプラグイン導入
- WAFの利用
これらの対策を複合的に行うことで、サイバー攻撃に対するリスクを低減することが可能です。本記事では、WordPressにおけるセキュリティ対策の必要性、主な被害リスクや被害事例、効果的なセキュリティ対策について解説します。
目次
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WordPressにおけるセキュリティ対策の必要性
WordPressは、Webサイトの構築プラットフォームとして世界的に広く利用されています。Webテクノロジーの調査機関であるW3Techsによると、2024年2月時点でWordPressは全てのWebサイトのうち43.1%の使用率を誇ります。
WordPressはシェア率が高く、初心者にもわかりやすい設計がされていますが、安全に利用するためには複合的なセキュリティ対策が必要です。なぜなら、WordPressは攻撃者によって狙われやすいという課題を抱えているためです。
WordPressが狙われやすい主な理由は、その人気と利用の広さにあります。多くのユーザーがプラグインやテーマを利用してカスタマイズしていますが、中にはセキュリティが更新されていない古いプラグインやテーマを利用しているユーザーも存在します。
WordPressを利用している全体のユーザーが多い分、システムの脆弱性を抱えながらWebサイトを運用しているユーザーも多いため、脆弱性を狙う攻撃者のターゲットにされやすいのです。このような背景から、WordPressを使用する企業や個人は、セキュリティ対策の必要性を深く理解し、適切な対策を講じることが求められます。
WordPressのセキュリティ対策を行わないリスク
WordPressのセキュリティ対策を行わないことで、Webサイトはさまざまなセキュリティリスクにさらされます。WordPressはその利用者の多さから、攻撃者にとって恰好の的になっており、攻撃による被害リスクが常に存在します。以下、具体的な被害リスクについて見ていきましょう。
不正アクセス
不正アクセスとは、許可なくシステムに侵入する行為のことです。WordPressに対する不正アクセスは、管理者権限の乗っ取りや悪意のあるコードの挿入など、深刻な被害に繋がる可能性があります。
このような攻撃はサイトの信頼性を損ねるだけでなく、訪問者に対してもセキュリティリスクをもたらすことがあります。
情報漏洩
WordPressのシステムやサーバーが攻撃を受けた場合、情報漏洩に繋がる恐れがあります。情報漏洩の被害に遭うと、ユーザー情報や機密情報が不正に公開されることになり、法的責任や信用失墜を招くことになりかねません。
情報漏洩は顧客の信頼を大きく損なうことになるため、データの暗号化やアクセス権限の厳格な管理など、万全なセキュリティ環境を構築することが求められます。
Webサイトの改ざん
Webサイトに掲載されている情報が改ざんされ、不適切な内容を意図せず発信してしまうケースもあります。このような攻撃を受けると、企業イメージの損失やユーザーへの悪影響を及ぼします。
また、訪問者を偽のページに誘導したり、マルウェアをダウンロードさせるよう仕向けたりなど、攻撃者によって不適切な行為を強制される場合もあるため注意が必要です。
スパムメールの送信
乗っ取られたWebサイトが利用され、大量の迷惑メールが送信される可能性があります。WordPressでは、メールの自動送信プログラムをプラグインによって簡単に設定できます。
攻撃者はこの利便性を悪用し、スパムメールの一斉送信を行うことがあるのです。この行為はサイトの信頼性低下はもちろん、ブラックリスト登録の原因にもなり得ます。
犯罪への加担
ハッキングされたサイトが犯罪行為に利用される恐れもあります。具体的には、以下のような行為が挙げられます。
▼犯罪行為に利用される主なケース
- マルウェアの配布基地として使用される
- サイト内でフィッシングサイトの誘導が行われる
- DDoS攻撃の踏み台にされる
このような活動が発覚した場合、サイト運営者は法的責任を問われる可能性があります。セキュリティプラグインの導入や定期的なアップデートを行うことが、犯罪への加担を防ぐために重要です。
WordPressのセキュリティに関する被害事例
本項では、WordPressのセキュリティに関する被害事例を3つ紹介します。被害内容やその原因を理解すれば、状況に合ったセキュリティ対策を行いやすくなります。
官公庁の実証事業のWebサイトが改ざん
2018年に官公庁が管轄する実証事業のWebサイトが改ざんされ、悪意のある外部サイトに誘導される事件が発生しました。対象のWebサイトでは、正規のWebサイトから盗用したとされる偽のページが複数掲載されていました。主な原因として、WordPressの古いプラグインに脆弱性があったと推測されています。
160万のWordPressサイトが攻撃の対象に
2021年12月9日、160万ものWordPressサイトがサイバー攻撃の対象になったことが、Wordfenceのインテリジェンスチームが行った発表によって判明しました。この攻撃は、WordPressのプラグインの脆弱性を狙ったものであり、Webサイトの管理者権限が奪われたほか、サイト内のコンテンツやプログラムの改ざんが行われました。
同社によると、4つの異なるプラグインといくつかのテーマが攻撃のターゲットとされ、16,000超のIPアドレスから発生する1,370万を超える攻撃が行われたとのことです。
プラグイン「WP File Manager」を対象にした攻撃
2020年9月、WordPressファイルを操作するプラグイン「WP File Manager」を対象にした攻撃が実施されたと報告されました。このプラグインは、WordPressの管理画面からサーバー上のファイルを編集できるというものです。
プラグインの脆弱性を突かれたことで、不正なファイルが外部からアップロードされ、Webサイトを正常に利用できなくなったり、スパムサイトへのリダイレクトが行われたりなどの被害が発生しました。なお、「WP File Manager」の脆弱性は、2020年9月1日に公開されたバージョンで既に修正されています。
WordPressを安全に運用するためのセキュリティ対策
WordPressのセキュリティを強化することで、攻撃によるリスクを大幅に軽減できます。以下、安全に運用するためのセキュリティ対策を5つ紹介します。
- ログインパスワードの強化
- テーマやプラグインの最適化
- 定期的なバックアップ取得
- セキュリティ用のプラグイン導入
- WAFの利用
各対策の詳細を1つずつ見ていきましょう。
ログインパスワードの強化
ログインパスワードの強化は、不正アクセスを防ぐ基本的な対策の1つです。複雑なパスワードの設定と、定期的な更新が重要になります。
▼複雑なパスワードの一例
- 数字 + 小文字 + 大文字:1234abcdABC
- 大文字 + 特殊文字 + 数字:ABCD!@#1234
- 小文字 + 数字 + 特殊文字:abcd1234!@#
パスワードを設定する際は、大文字・小文字の英字、数字、記号を組み合わせたものが推奨されます。予測しにくい組み合わせを作ることで、総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)のリスクを減らせます。
テーマやプラグインの最適化
脆弱性を減らし、サイバー攻撃によるリスクを低減させるためには、テーマやプラグインの最適化が不可欠です。一般的にテーマやプラグインは、開発者によってセキュリティの脆弱性が修正されたバージョンが定期的にリリースされるため、アップデートをすぐに適用することが大切です。
また、使用していないプラグインやテーマがある場合は、できるだけ早急に削除するようにしましょう。セキュリティの面から不要なリスクを排除することが、安全なWordPress運用の鍵となります。
定期的なバックアップ取得
万が一の時に備えて、定期的にバックアップを取得するようにしましょう。サーバー障害やサイバー攻撃によりWebサイトが損害を受けた場合でも、データの損失を防ぎ、迅速に復旧させることが可能になります。
バックアップを取得する際は、WordPress本体と格納されているファイルはもちろん、運用に関わるデータベースのバックアップも取得するようにしましょう。
セキュリティ用のプラグイン導入
セキュリティ用のプラグイン導入は、WordPressサイトの保護を強化します。これにより、不正アクセスのブロックや監視機能を追加し、サイトのセキュリティレベルを向上させることが望めます。
▼プラグイン導入による主な追加機能
- マルウェアのスキャン
- ログイン試行の制限
- セキュリティの脆弱性の警告
多様なセキュリティプラグインが提供されており、多岐にわたる保護措置を講じることが可能です。プラグインを導入する際は、必ず提供元の信頼性を確認するようにしましょう。
WAFの利用
WAF(Web Application Firewall)の利用は、Webアプリケーションを保護するために有効です。WAFとは、Webアプリケーションに特化したファイアウォールのことであり、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの攻撃を検知し、防御する機能を持っています。
WAFを導入することで、Webサイトへの攻撃をリアルタイムで検知し、自動的にブロックすることが可能です。WAFはレンタルサーバーから提供されている場合もあるため、導入する際は利用環境を確認してみてください。
まとめ
本記事では、WordPressにおけるセキュリティ対策の必要性、主な被害リスクや被害事例、効果的なセキュリティ対策について解説しました。
WordPressは世界的に広く利用されているWebサイトの構築プラットフォームであり、シェア率が高いことから、攻撃者によってターゲットにされやすいという課題を抱えています。WordPressで構築したWebサイトを安全に運用するためには、複合的なセキュリティ対策を講じる必要があります。
WordPressのセキュリティ対策以外にも、企業や組織に求められるセキュリティ対策は多岐にわたります。企業の情報資産やブランドイメージを保護するためにも、以下のようなセキュリティ対策を同時にご検討ください。
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