「冒認出願とはどんな行為のこと?」「冒認出願への対応措置やその詳細を知りたい」という疑問がある方もいるのではないでしょうか。
商標における冒認出願とは、サービスや名称の本人ではない、権利を有していない第三者が勝手に商標出願することです。
自社やサービスのために作成したロゴやマークが第三者によって勝手に出願され、使う予定であった商標が使えなくなってブランド力や信頼性の低下につながる危険性があります。本記事では、冒認出願の詳細や冒認出願されたときの対策について解説します。
目次
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冒認出願とは
冒認出願とは、サービスや名称の本人ではない、正当な権利を有していない第三者が勝手に出願することです。
勝手に商標出願されて登録されてしまうと、その商標権は出願した者が権利者となります。
これによって冒認出願した権利者がその商標権を使用し、消費者の混乱を招いたり、当事者間の紛争を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
商標とは
そもそも商標とは、商品やサービスがどの企業によって提供されているのかを示すためのマーク(識別標識)のことです。これは、商品名やロゴ、スローガン、パッケージのデザインなど多岐にわたります。
商標の登録にあたっては、登録したい文字列、図形などを決定し、商標を使用する商品やサービスを指定します。それを特許庁に出願した後、審査に通過することで商標は登録されます。
商標は企業や製品を識別し、市場競争において差別化を図る重要な要素です。消費者は商標を通じて製品やサービスの品質や価値を判断します。
冒認出願のリスク
冒認出願によるリスクは、最初にその商標を採択し、商標登録(独占使用権)を取得できる可能性のあった者が、商標登録出願を怠ってしまったことで、他人に抜け掛け登録をされ、使用できなくなってしまうことです。
具体的には以下のようなことが挙げられます。
- 商標登録ができない
- 商標の使用差し止め請求及び損害賠償請求を受ける可能性がある
- 社会的信用・評価の低下
それぞれを詳しく解説していきます。
商標登録ができない
第三者が商標登録を行うことで、本来の所有者はその商標権を得ることができなくなります。商標法では第25条で「専用権」を明記しており、商標権者が登録した商標の独占的使用が認められます。また商標法の特徴ですが、商標登録は「先願主義」を採用しています。「先願主義」とは先に出願した人が優先、つまり先着順を意味します。
「専用権」を先着順で得ることができるというのが商標法の特徴になります。
商標の使用差し止め請求及び損害賠償請求を受ける可能性がある
使ってきたブランド名や製品名等について、商標登録した権利者から使用差し止めや損害賠償請求を受ける可能性があります。先述した商標法第25条「専用権」により商標権者の独占的な使用が保証されています。
類似する文字であったり、外観のロゴを使っていたり、同じ内容のサービス名を第三者が商標登録していることに気付かず使っていたら商標権を侵害していた、という話になりかねません。
またこれから申請しようとしていた商標が先に登録されていた場合、例えば新サービスがリリースできない、または事業展開に大きな支障をきたすことにもなります。
社会的信用・評価の低下
自らのブランドについて、商標登録を行うことを怠たり、安心・安全な取引環境を構築できず、知らず知らずのうちに商標侵害してしまっていた、ということが社会的に公となった場合、社会的な信用や評価を下げる可能性があるでしょう。
自社ブランド等の権利を守れていない・また商標権を侵害していたという印象を社会的に与えてしまうと、今後の事業活動にも少なからず影響を及ぼす可能性があるでしょう。
冒認出願された事例
冒認出願に関するニュースは頻繁に耳にする内容ではないかもしれませんが、実は誰もが知っているような企業でも起こったことのある身近な内容になります。
下記では過去に裁判へと発展した商標権の冒認出願の事例を紹介します。
Supreme
2018年12月に中国で行われたサムスンのイベントにて「Supreme」とのコラボが発表されたものの、Supreme公式がこのコラボを「事実無根」と発表しました。
実はSupremeの模倣品ブランド「Supreme Italia」がサムスンと提携しており、いくつかの国で正式なブランドとして商標登録を行っており、本家Supremeが冒認出願としてSupreme Italiaを訴えたものの最高裁判所で本家が敗訴しました。
しかし2021年、Supreme Italiaなどの運営に携わっていた経営者たちに懲役刑・本家Supremeへの賠償命令が下りました。
PPAP(ピコ太郎)
2016~2017年にかけてピコ太郎さんの大ブレイクネタ「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」を含む17件がピコ太郎さん所属のエイベックス社とは無関係の大阪の企業から商標出願がなされていました。
2016年の10月14日に所属事務所エイベックスから「PPAP」を商標出願したものの、大阪の企業が「PPAP」の出願をしたのが10月5日でした。
大阪の企業が出願した時点で、すでに「PPAP」の社会的知名度は一定数あったため、エイベックス社の商標出願が登録されて商標権者の権益が守られる形で着地しました。
無印良品
2019年に無印良品を展開する良品計画が、中国において「無印良品」の商標登録を行いましたが、一部の商品分野にて商標登録が漏れており中国現地の企業に先に商標登録をされてしまいました。
中国企業が良品計画に対して商標権侵害を訴え、結果として良品計画の敗訴となり1000万円の賠償金が命じられる事態となりました。
冒認出願への対策
自社のブランドイメージを守るためにも自社の商標はしっかりと守っておきたいですよね。
ではどう対策を実施するか、商標の冒認出願に対する対策としては、具体的には以下のような方法があります。
- 商標の早期出願
- 商標の定期的な監視
- 異議申立て・無効審判
それぞれの対応策について以下で詳しく解決します。
商標の早期出願
最も効果的であり確実な方法は早期に商標登録の出願を行うことです。
先述の通り、商標登録は「先願主義」で先に登録出願した人に商標権が与えられます。
特許とは異なり商標では登録をして初めて商標権が与えられる仕組みとなり、誰が先に登録をしたかが非常に大事になります。
そのため基本的な話ではありますが、自身の商標を守るためには、商標登録が必要になりそうなものは必ず早期のタイミングで登録出願を行いましょう。
商標の定期的な監視
他社からの商標出願の情報を監視して、自社ブランド名やサービス名など類似した商標の出願があった場合にすぐに対応をすることも大事になります。
商標権が登録されると取り返すことは難しく、また取り返すまでに莫大なコストと時間を要します。
出願のタイミングで早期に気づくことで異議申立てや無効審判の手続きが可能となります。
異議申立て・無効審判
基本的には商標登録後の取り返しはできないものの、取り返す手段が異議申立てと無効審判になります。
異議申立て・無効審判共に登録要件にあたる商標法3条、4条等を満たしていないことを理由に登録商標の失効を目的とした制度となります。
どちらも目的は同じものの申立期間や申立人等にいくつか異なる点があります。
異議申立て | 無効審判 | |
---|---|---|
申立人 | 誰でも可能 | 利害関係者 |
申立時期 | 商標掲載公報の発行日から2月以内 | 制限なし |
審理機関 | 特許庁 | 知財高裁 |
上記以外にも違いはありますが、異議申立てはあくまでも出願された登録商標に対して公平な視点で申立を行うという前提があるので、申立は誰でも可能となります。
一方、無効審判は該当の登録商標に対する利害関係者のみとなるので、当事者間の紛争解決の意味合いがある手段となります。
商標の冒認出願対策はGMOブランドセキュリティ
画像引用元:GMOブランドセキュリティ
自社商標が第三者に勝手に出願されて登録できなくなってしまった、また逆に商標権侵害で訴えられてしまったなどの状況は避けたいものです。
「GMOブランドセキュリティ」では世界各国における戦略的な出願手続きのサポートを行います。
冒認出願を阻止するための商標監視や、万が一出願されてしまった場合の異議申立てや各種審判の手続き等の支援をトータルで実施します。
勿論、世界各国の権利化のお手伝いも行っています。
まとめ
本記事では、商標における冒認出願の詳細や対応措置、移転・無効が認められた事例について解説しました。
商標の冒認出願の場合、「先願主義」であり、先に出願した人がその商標権を得ることができます。
ロゴやサービス名などの自社の大事な商標が勝手に商標権を取られてしまうという事態は避けたいところですが、
防ぐために出願すべき商標は早めに出す、また冒認出願されてしまった場合は外部の支援も合わせて申立を行う等の対応を行っていきましょう。
GMOブランドセキュリティでは商標に関する支援を手厚くご提供しています。
気になることがあればぜひご相談してみてください。
商標権や商標登録については、以下の記事をご参照ください。
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